極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 その頃、羽衣子は幼稚園から帰宅した希海と自宅の庭でボール遊びをしていた。

 勿論、組員が常に側に控えている。

「ういちゃーん、いくよー!」

 希海が元気良くボールを蹴り上げたその時、

「吾妻さん、希海くん、そろそろ中へ入って下さい」

 どこか慌てた様子の皐月が二人に声を掛ける。

「えー、やだ! まだあそぶ!」

 希海が駄々をこねるのも仕方がない。

 二人が外で遊び始めてからまだ十分程しか経っていないのだから。

「何か、あったんですか?」

 直感でそう感じた羽衣子が皐月に問い掛けるも、

「いえ、その、何かあった訳では無いんですけど、何かあってはいけないので……」

 どこか言葉を濁すだけ。

 それでも、理由があってのことだと理解している羽衣子は不貞腐れている希海に向き直ると、

「希海くん、お外で遊ぶのはまた後でにして、私とお菓子作りしない? この前絵本で読んだみたいに、お菓子パーティーしよう! ね?」

 希海がボール遊びよりも興味を持ちそうなことを引き合いに出して説得にあたる。

 すると、

「おかしパーティーする!!」

 すっかり機嫌が戻った希海はボールを片付けると、羽衣子と共に家の中へ入って行った。

 それから皐月も混じえて三人でお菓子作りを始めていると、玄関のドアが開く音が聞こえるや否やすぐに廊下を駆けて来る音が聞こえて来て、

「羽衣子!」

 その声と共に勢い良くリビングのドアが開いたことで、希海と羽衣子は酷く驚いた様子でその場に立ち止まる。

「昴……さん?」
「パパ?」

 普段ならまだ帰宅する時間では無いこともあって、突然の帰宅に驚く二人。

「皐月、希海を頼む。羽衣子、ちょっと来てくれ、話がある」

 そして、皐月に希海を任せた昴は羽衣子の手を引くと、そのままリビングを出て二階へ上がり、

「お前の部屋で構わないか?」
「あ、はい……どうぞ」

 寝室は希海が来るかもしれないこと、書斎では狭くて落ち着いて話が出来ないことを考慮し、羽衣子の部屋で話をすることになった。

「……あの、昴さん、何かあったんでしょうか?」

 部屋に入り、昴はドレッサーの椅子に座り羽衣子はベッドの上に腰掛ける。

 ただならぬ様子に恐る恐る羽衣子が問い掛けると、昴は拳を握り締めたまま、先程事務所で知った話を羽衣子にも共有した。
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