極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
守りたいモノ
「羽衣子、いい加減何か口にしたらどうだ? 流石に腹減ったろ?」

 すっかり日も暮れて倉庫内には豆電球の灯りが灯るだけの薄暗さの中、水分補給や食事が出来るように手の拘束が解かれ、代わりに片脚が柱に繋がれて逃げ出せないようなっている中、水分補給しかしない羽衣子を心配するように想汰が声を掛ける。

 すぐ側にはペットボトルのミネラルウォーターやコンビニ弁当が用意されていて、それを好きな時に口にするよう言われていた。

「いらない……こんな状況でお腹なんて空かないもの……」

 けれどとても食事をとる気になれない羽衣子は首を横に振ってそれを拒否し続けた。

「お願い、お兄ちゃん……私を解放して……お兄ちゃんも、ここから逃げようよ」

 見張りはずっと想汰一人ということもあり、羽衣子は何とかして想汰を説得しようと何度かそんな言葉を投げ掛けるけれど、

「お前は甘いよ、高遠に目をつけられたら逃げることなんて出来ない。稲見組ってのはな、組長や若頭よりも若頭補佐の高遠の方が支持されてんだぜ? アイツは相手に取り入るのが上手い上にずる賢い。若頭を裏で嵌めようと目論んでて、それももうすぐ成功しそうだし、組長にも気にいられてるから今の若頭が居なくなったら即若頭に上がるだろう。そうすれば更にやりたい放題って訳。そんな奴から逃げるとか無理無理。だったら大人しく従ってる方がいい。俺は暮らしに困らなければそれでいいから」

 想汰には何一つ響かないようで羽衣子に為す術は無かった。

(昴さん……大丈夫かな……希海くんも……)

 逃げられない状況の中、常に思い浮かぶのは昴や希海のこと。

 昴が無事なのかどうか、助けに来て欲しい思いはあるけれど無理はして欲しく無くて、これ以上危険な目に遭って欲しくない羽衣子は悲しみに暮れる。

 そんな時、遠くの方から足音が聞こえてきて羽衣子が身構えていると扉が開き、

「想汰、妹の調子はどうだ?」

 一人の男が姿を見せた。
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