極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 現れた男を前に、羽衣子は恐怖で息を呑んだ。

 艶のある黒髪に鋭く細められた切れ長の瞳には誰も寄せ付けない冷たさが宿っていて、黒いシャツの胸元を無造作に開け、首筋から胸元へと広がる鮮やかな和彫りの刺青を隠そうとせず、圧倒的な存在感を放っている。

「何だ。飯食ってねぇのか?」
「ああ、はい。腹減らないって言うんで」
「ふーん? まあ女は細い方が良いから良いけど、あまりガリガリの女は好かねぇからな、適度に食事はとってもらわねぇと困るぞ」
「…………」
「何だ? その目は」
「……っ」

 羽衣子が恐怖から身体を強張らせて怯えているのが気に入らなかったのか、男は苛立ちを露わにしながら彼女へ近寄っていく。

「やっ……来ないで……!」
「来ないでだと? お前はもう俺の女になるんだぜ? 嫌がるってなら身体に教え込むしかねぇな?」
「やだ……っ、お兄ちゃん、助けて!」

 柱に繋がれていることから逃げられず、追い詰められた羽衣子は想汰へ助けを求めるも、

「羽衣子、お前はもう高遠さんの女なんだ。きちんと言うこと聞けよ」

 それだけ言うと、部屋を出て行ってしまう。

「やっ、お兄ちゃん! 待って! 行かないで!」

 そんな訴えも虚しく扉は閉められ、目の前に居る高遠と二人きりになってしまった羽衣子。

(この人が、高遠……)

 高遠は一目で裏社会の人間だと分かる雰囲気を纏っていて、羽衣子はただただ恐怖で動くことすら出来ずにいる。

「無駄だ。お前の兄貴は小心者だからな、俺には逆らえねぇよ。さてと、京極が来るまでまだ時間はあるだろうし、お前には俺の女になる自覚を持ってもらわねぇと困るからなぁ、お前の中から他の男(京極)の記憶を消すには、やっぱり身体に教え込むのが一番、だよな?」
「……やっ、やめて……」
「そういう風に怯える顔、そそるなぁ。嫌がる女を無理矢理犯すのも嫌いじゃねぇし、ほら、拘束解いてやるから逃げてみな。けどまあ、部屋の外には出れねぇよ。想汰がドアの前に居るからな」

 言いながら羽衣子の脚の拘束を解いた高遠。

 自由になった羽衣子は震える身体で立ち上がると、藁をもすがる思いでドアの方へ向かって行きドアノブを回すも、高遠の言う通り外側から抑えられているのかビクともしない。

「お兄ちゃん、お願い開けて!! お兄ちゃん!!」

 それでも諦めず部屋の外へ居るであろう想汰へ何度も呼び掛ける羽衣子の背後へゆっくり高遠が近付いて行き、

「もう諦めろって。ほら、こっちに来い」
「嫌っ! 離して!!」

 強引に腕を掴まれると、そのまま部屋の奥へ引きずられるように連れて行かれ、

「きゃっ!?」

 羽衣子の身体は埃を被った古びたマットレスの上へ乱暴に突き飛ばされてしまった。
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