極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「な、何だよ? つーかさ、お前、羽衣子のことが大切なんだよな? こんなことして良いのかよ? 俺、羽衣子の兄貴だぜ? お前の大切な羽衣子の目の前で、兄貴である俺を殺るつもりなのかよ?」

 想汰は焦りの色を浮かべながら昴に向けて言葉を放つ。

「兄貴だと? 笑わせるな。盗聴器を仕掛けたり借金を押し付けたり、男に襲われかけてる妹が泣いて助けを求めているのに助けもしない……そんな奴を兄貴と思える訳がねぇだろ?」
「そ、それは、仕方ねぇんだよ、俺はもう、高遠さんには逆らえねぇんだから……な、なぁ羽衣子、お前からもそいつに言ってくれよ、俺が殺されてもいいのか? お前と血の繋がった家族なんだぜ? 助けなかったのは悪かった! もう二度と、こんなことはしないから! な?」

 けれど昴には何も響かずに今にも引き金を引かれそうだと焦った想汰は、身体を起こして想汰から距離を取った羽衣子に昴を説得するよう頼み込む。

「……お兄ちゃん……、私、盗聴器のことがあっても、借金のことがあっても……悲しかったけど、きっと何か理由があるんだって、心の奥ではお兄ちゃんを信じてた。家族だから……昔のお兄ちゃんは、優しくて、私にとってヒーローみたいな存在だったから…………。だけど……っ、今のお兄ちゃんは……もう……」

 そこまで言って羽衣子は言葉を詰まらせ、そんな羽衣子の傍へ向かいながらも昴は想汰へ銃口を向け続ける。

 そして、悲しげな表情を浮かべながら必死に言葉を紡ごうとする羽衣子の身体を抱きしめた昴は、

「羽衣子、もういい。それ以上何も言うな。コイツはもう兄でも何でもねぇ。お前の記憶の中にいる兄貴の吾妻 想汰は……死んだんだ」

 優しく諭すようにそう言い聞かせた。

「……っ」

 昴の言葉に涙を零した羽衣子は昴の胸に顔を埋めながら、

「そう、ですね……」

 納得するように頷き、それ以上は何も言葉にしなかった。

「な、何なんだよ!? 羽衣子、俺は正真正銘お前の兄貴だ! 見捨てるのか? 俺が殺されても良いのかよ!? なぁ!?」

 羽衣子を頼ることが出来ないことが分かった想汰は苛立ちを露わにしながら怒鳴り声を上げるも、

「ひぃっ!?」
「黙れ。これ以上羽衣子を悲しませるな。コイツを事務所まで連れて行け」

 威嚇に放った一発の銃弾が想汰の顔のすぐ横に撃ち込まれたことで崩れ落ちるようにその場に座り込み、恐怖から動かなくなった想汰へ向けて冷静に言葉を放った昴は控えていた組員に想汰を捕まえるよう指示をした。
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