極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 病院へ到着すると羽衣子の身を案じた昴はすぐに怪我や体調を詳しく診て欲しいと話し、実と共に診察室へ入っていく。

 診察を終えると実は昴だけを別室へ呼び寄せる。

「白城、羽衣子の具合はどうだ?」
「擦り傷や打ち身程度で、命に関わるような怪我はないし、倉庫に長時間いたせいで埃を吸い込んで咳き込んでいるが、それも時間が経てば落ち着くだろう」

 そこでカルテへ目を落としながら実は言葉を続ける。

「それと、食事は勿論水分もあまり摂れていなかったみたいで少し衰弱しているから、しっかり摂らせて安静にしていれば問題ない」
「……そうか」

 胸の奥に張り詰めていたものがようやく緩み昴が安堵の息を吐くと、実は少し表情を引き締める。

「ただな……身体の傷より、精神的なダメージのほうが心配だ」
「…………」
「吾妻さんは堅気の人間だ。こんな事件に巻き込まれること自体、慣れてるわけが無い。しかも男に襲われかけたんだ。恐怖は簡単には消えない」

 その言葉に昴は拳を強く握り締める。

「今はとにかく、ゆっくり休ませて、心のケアをすること。身体の傷なら俺が治せるが……心の傷は、お前にしか癒やせない」
「ああ……分かってる」

 短く答える昴の声音には揺るぎない決意が滲んでいた。

「よし。じゃあ次はお前だ」
「俺はいい」

 即座に断る昴だったが実は呆れたように溜め息を吐く。

「俺を誰だと思ってる。医者だぞ? 傷、開きかけてんだろ? 無茶しやがって」

 昴は小さく苦笑する。

「仕方ねぇだろ。そうでもしなきゃ大切なモノは守れねぇ」

 その一言に実は何も返さず静かに頷いた。

「……そうだな。けど、それを守る為にも、お前が倒れるなよ」
「ああ」

 応急処置だけは大人しく受けると昴はすぐに羽衣子の待つ病室へ向かった。

 病室の扉を静かに開けると、ベッドでは羽衣子が静かな寝息を立てて眠っていた。

 緊張の糸が切れたのだろう。

 その寝顔にはようやく安堵したような穏やかさが浮かんでいる。

 昴は物音を立てないようベッドの脇へ椅子を運んでそっと腰を下ろすと、眠る羽衣子の顔を見つめながらその手を静かに包み込む。

「……もう大丈夫だ」

 誰に聞かせるでもない小さな呟きは静かな病室へ溶けていき、昴は羽衣子が覚ますまで片時も離れることなく傍に寄り添い続けていた。
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