極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 暫くして涙が落ち着くと、羽衣子は昴の胸に頬を寄せたまま小さな声で呟く。

「昴さん……」
「ん?」
「助けに来てくれたことは、本当に嬉しかったです。何度お礼を言っても足りないくらい……」

 そこで一度言葉を切ると、羽衣子はそっと顔を上げて真っ直ぐに昴を見つめた。

「だけど……無茶はしないでください」
「…………」
「怪我をしているのに、それでも私を助けに来てくれたっていうのは嬉しかった反面、すごく心配だったんです」

 潤んだ瞳が揺れ、

「もし昴さんに何かあったらって考えたら……怖くて……」

 昴の服をきゅっと握り締めながら羽衣子は震える声で言葉を続けた。

「だからお願いです。これからは自分のことも大切にしてください」

 その一言に昴は何も返せず、困ったように笑うと羽衣子の頭を優しく撫でた。

「……悪ぃ」
「謝ってほしいわけじゃないんです……」
「ああ、分かってる。心配かけたな」

 羽衣子にとって、その言葉だけで十分だったようで安心したように微笑むと、もう一度昴の胸へそっと身体を預けていった。

 羽衣子を失いたくないという昴の想い。

 そして、昴にも無事でいてほしいという羽衣子の願い。

 お互いに何よりも大切で守りたいモノだからこそ、絶対に失いたくない。

 二人は互いの温もりを確かめ合うように抱き締め合いながら、この束の間の静かで穏やかな時間を過ごしていくのだった。

 その後、二人の迎えに訪れた乙哉から高遠や想汰について話を聞いた昴。

 今回の件は七鳳組の組長も黙ってはおれず、直々に稲見組へ連絡を取って組長同士の話し合いへと発展。

 高遠が裏で動いていることを知らなかった稲見組の組長は謝罪すると共に、捕われている二人にはその場で絶縁を言い渡した。

 その上で、賠償問題や互いの組の今後についてなども新たに取り決めが行われ、絶縁にした二人の処遇については七鳳組に一任するという話で決着がついた。

「そんな訳で高遠と吾妻の処遇は完全にこっちに委ねられました」
「そうか」
「そのことで組長が昴さんに話があるそうなので、このまま組長の屋敷に向かえますか?」
「ああ、そうだな。希海のことも心配だし、羽衣子にとっても希海が傍に居る方が気が紛れるだろうからな」
「分かりました。それじゃ向かいましょう」

 こうして三人は七鳳組組長の屋敷へ向かうことになったのだった。
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