極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 それから料理が全て食卓に並ぶと全員で、「いただきます」と手を合わせてそれぞれ箸を取った。

「羽衣子ちゃんが手伝ってくれたお陰で今日は早く支度が出来て助かったわ」

 登紀子が嬉しそうに微笑むと羽衣子は慌てて首を横に振る。

「いえ、私は大したことは何も……」
「そんなことないわよ。うちは見ての通り男所帯でしょう? 乙哉や皐月も料理を手伝ってくれるけど、やっぱり女の子と一緒に台所に立てるのは嬉しくて。娘がいたらこんな感じなのかしらって思っちゃったわ」

 その優しい言葉に羽衣子は思わず目を潤ませる。

「登紀子さん……」

 穏やかな空気の中、亮治もゆっくりと口を開いた。

「羽衣子さんが皆から好かれているのがよく分かる。昴や希海がいつも褒めているからな」
組長(オヤジさん)……!」

 思いがけない暴露に昴は照れくさそうに頭をかく。

 その様子を見ていた希海は満面の笑みで羽衣子にくっつきながら、

「ぼく、ういちゃんすき!」

 そんな真っ直ぐな一言に、食卓は一斉に笑いに包まれる。

「ふふっ、ありがとう」

 羽衣子も自然と笑みを浮かべ、先程まで感じていた緊張はいつの間にかすっかり解れていた。

 そして羽衣子が思ったのは、

(ここにいる人たちは誰一人として血の繋がりはないのに……まるで本当の家族みたい……)

 本当の家族のような温かさ。

 だからこそ、ふと兄の想汰のことが頭を過ぎる。

(お兄ちゃん……)

 血の繋がりがあっても、分かり合えない人はいる。

 反対に、血の繋がりがなくてもこうして心から相手を大切に思い合える人たちもいる。

 家族であるかどうかではない。

 本当に大切なのは相手を思いやる心なのだと羽衣子は改めて気づかされていた。

 そんな兄への複雑な想いがほんの一瞬だけ羽衣子の表情に影を落とすと、その小さな変化を昴だけは見逃さなかった。
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