極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 食事を終えると、亮治や登紀子が外まで見送りに出た。

「羽衣子ちゃん、またいつでも遊びに来てちょうだいね」

 登紀子が優しく声を掛けると羽衣子は嬉しそうに笑みを浮かべる。

「はい! あの、良かったら今度お料理を教えてください」
「もちろん。いつでも大歓迎よ」
「ありがとうございます。楽しみにしています」

 その隣では希海が元気よく手を振っていた。

「じいじ、ばあば、バイバイ!」
「それでは、また」

 別れの挨拶を交わすと、一行を乗せた車はゆっくりと屋敷を後にした。

 車内には穏やかな空気が流れている中、ふいに昴が口を開く。

「悪かったな」

 突然の言葉に羽衣子は首を傾げた。

「え?」
「いきなり連れて行ったから、緊張しただろ?」
「あ……はい」

 正直に頷く羽衣子に昴は少し苦笑する。

「まあ、組長の屋敷ってだけで緊張するのは無理もない。でも、あそこは俺にとっても希海にとっても実家みたいなものなんだ。できれば慣れてくれると助かる」

 その言葉に羽衣子は柔らかく微笑んだ。

「最初は緊張しましたけど……登紀子さんも組長さんもとても気さくな方で話しやすかったので、もう大丈夫です」
「そうか。それなら良かった」

 昴が安堵したように笑うと運転席の乙哉と助手席の皐月は顔を見合わせ、二人のやり取りを微笑ましく聞いていた。

 やがて車は自宅へ到着し、羽衣子が希海と共に家に入ると昴が声を掛けた。

「羽衣子」
「はい?」
「希海が昼寝をしたら、俺のところへ来てくれ。話したいことがある」

 少しだけ真剣な表情に羽衣子は不思議そうな顔をしながらも素直に頷く。

「はい、分かりました」

 何の話だろう――そんな疑問を胸に抱きながら羽衣子は希海を寝かしつけた。

 そして、寝息を確認すると静かに部屋を出て書斎へ向かい、コンコンと控えめに扉を叩く。

「昴さん、羽衣子ですけど」
「ああ、入ってくれ」
「失礼します……あの、お話って?」

 書斎へ足を踏み入れた羽衣子が尋ねると昴は一拍置いてから静かに口を開いた。

「……吾妻 想汰ことだ」

 その一言を聞いた瞬間、羽衣子の表情がわずかに曇る。

 兄の話題になるとは思っていなかったのだろう。

 無意識に指先を握り締め、どこか落ち着かない様子を見せるのだった。
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