極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「今、高遠と吾妻は七鳳組の事務所の地下に居る」
「…………」
「高遠については、稲見組の若頭暗殺を企てていた件も明るみに出ているから身柄は柳生会へ引き渡されることになるだろう。だが、吾妻については……処遇の全てが俺に委ねられた」
「…………っ!」

 その言葉に、俯いていた羽衣子ははっと顔を上げた。

「……昴さんが、兄の処遇を決める……ということですか?」
「ああ」

 短い返答を聞いた羽衣子は再び視線を落とすと唇を固く結ぶ。

 そんな羽衣子を見つめながら昴は淡々と言葉を続けた。

「俺はアイツを許すつもりはない。最低の人間だ。正直、生かしておく価値すらないと思っている」

 厳しい言葉に羽衣子は何も返せない。

 それでも昴は少しだけ声音を和らげた。

「……ただ、お前の考えは聞いておきたい。どれだけ最低な奴でも、お前にとっては血の繋がった家族だ。だから、お前の気持ちを無視して俺一人で決めるつもりはない」
「……昴さん……」
「明日の午後、事務所へ行く。それまでに答えを出してほしい」

 突然突きつけられた決断に羽衣子の表情は曇ったままだった。

 一晩で答えを出せと言われても簡単なことではないのは昴も理解している。

 けれど、いつまでも結論を先延ばしには出来ない。

 もし羽衣子が決められなければ、その時は自分が責任を負って決断するつもりだった。

 沈黙が流れたあと、羽衣子は意を決したように顔を上げる。

「……あの、昴さん」
「何だ?」
「明日、事務所へ行く時……私も連れて行っていただけませんか?」

 思いがけない願いに昴は目を見開いた。

「……もう一度、兄と直接話をさせてほしいんです。お願いします」

 真っ直ぐに頭を下げる羽衣子のその瞳には迷いこそあったが、どこか覚悟を決めたようにも思えた昴は暫しの沈黙のあと、

「――分かった」

 きちんと向き合うことで羽衣子自身が答えを見つけられるのなら、そう判断した結果、羽衣子の願いを受け入れたのだった。
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