極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「乙哉、皐月、希海を頼む」
「了解」
「こっちのことは任せてください」

 翌日、一緒に行きたいと駄々をこねる希海を二人に託した昴は羽衣子を連れて七鳳組の事務所へ向かい、その車内には重苦しい沈黙が流れていた。

 ハンドルを握る昴の隣で羽衣子は膝の上に置いた手を強く握り締めている。

 昨日、想汰のことを聞かされてから羽衣子の心はずっと揺れ続けていた。

 これまで想汰から受けてきた仕打ちを思えば許すという選択肢など本来はあり得ない。

 それでも、たった一人の肉親であるという事実が羽衣子の決意を鈍らせていた。

 葛藤を抱えたまま俯く羽衣子を横目に昴は何も言わず車を走らせる。

 今は下手な慰めの言葉よりも羽衣子自身が答えを出す時間が必要だと分かっていたから。

 やがて車は事務所へ到着し、車を降りた二人を待機していた数人の組員が出迎えた。

「二人はどうだ? 何か話したか?」

 昴が尋ねると一人の組員が首を横に振った。

「いえ、高遠の方は相変わらず何も話しません。吾妻の方は、『自分は悪くない。悪いのは全部高遠だ』の一点張りです」
「……そうか」

 そのやり取りを聞いた羽衣子は胸の奥が締めつけられる。

 想汰は今もなお自分の非を認めようとしていないからだ。

「羽衣子、大丈夫か?」

 心配そうに声を掛けられ羽衣子は小さく頷く。

「は、はい……」
「そうか、それなら行くぞ」

 昴はそう告げると地下へ続く階段へ足を進めていく。

 薄暗い通路を進み、いくつか並ぶ鉄扉の前で立ち止まった昴に続いて羽衣子も足を止め、鍵を外しながら昴は静かに言った。

「二人きりで話した方がいいだろう。俺は外で待っているから、話したいことを話すといい」

 ゆっくりと扉が開き、意を決して中へ足を踏み入れた羽衣子の姿を見た想汰は目を見開いた。

「羽衣子!」

 その声には驚きと安堵、そしてどこか嬉しさまで滲んでいた。

「来てくれたのか!」

 昴は部屋へ入り、想汰が柱に拘束されて身動きが取れない状態であることを改めて確認する。

「羽衣子がお前と話がしたいそうだからな。時間をやる」

 それだけ言い残すと部屋を出て静かに扉を閉めた昴は、扉を背にするように寄りかかった。
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