極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 車は住宅街を抜け、やがてマンションの敷地へ辿り着く。

「着きましたよ」

 乙哉がそう告げると羽衣子は小さく頷いてシートベルトを外した。

 二人はエントランスへ入りエレベーターへ。

 部屋の前で乙哉が鍵を開けてドアを開くと、

「せんせ!」

 弾んだ声と共に希海が駆け寄ってきて、そのまま羽衣子にぎゅっと抱きついた。

「わっ……」

 不意打ちに驚きながらも羽衣子は思わず笑みを零して頭を優しく撫でると、希海は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 その様子を見ていた昴が玄関先へと歩み寄る。

「乙哉、ご苦労」
「いえ、これくらいなんてことないっす」

 そう言って笑う乙哉に頷いた後、昴は羽衣子へと視線を向ける。

「吾妻先生お疲れさまです。どうぞ、上がってください」
「……お邪魔します」

 少し緊張した面持ちで靴を脱いだ羽衣子は部屋の中へと足を踏み入れた。

 希海に手を引かれてリビングへ入ると、

「……わあ……」

 ダイニングテーブルの上には色とりどりの料理が並んでいた。

 和食に洋食、中華まで――まるで小さなパーティーのよう。

 その反応に昴は少しだけ苦笑する。

「吾妻先生の好みが分からなかったので……色々なところでデリバリーを頼んでしまいました」
「そんな……すみません、わざわざ……」

 申し訳なさそうに謝るに羽衣子に昴は首を振る。

「気にしないでください。大したことではありませんし、お誘いしたのはこちらですから」

 そう言って椅子を軽く引く。

「まずはご飯にしましょう。話はその後で」
「……はい」

 促されるまま席に着き、四人で食事を囲む。

 羽衣子の隣には当然のように希海が座っていた。

「せんせ、これおいしいよ!」
「本当?」

 小さな手で一生懸命に勧めてくる様子に羽衣子の表情も自然と和らいでいく。

 希海は終始嬉しそうに笑い、何かあるたびに羽衣子へ話しかけていた。

 その無邪気な様子に、どこか張り詰めていた羽衣子の心も少しずつ解けていく。

 そして、和やかな食事の時間がひと段落すると、

「乙哉、少し希海の相手を頼む」

 昴が小声で乙哉に希海を見ているように頼む。

「了解っす。ほら希海、向こうの部屋で遊ぶぞー」
「やだ、せんせとあそぶ」
「希海、先生と話があるから少しだけ乙哉と遊んでてくれ。な?」
「……うん」

 羽衣子と遊びたい希海は渋々納得すると、乙哉に手を引かれて寝室へと移動していった。
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