極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 ようやく中へ入ることが出来ると、希海は満面の笑みを浮かべながら辺りをきょろきょろと見回した。

「あれいいな! あっちのなに?」

 目に入るものすべてが珍しいのか希海は次々と指を差しては乙哉や皐月に尋ねていく。

 そんな中、ふと希海の視線がある家族のところで止まった。

 その家族はキャラクターの耳が付いた帽子やカチューシャを身に着けていて、それを見た瞬間希海の瞳がぱっと輝いた。

「あれ! ぼくもあれつける!」

 自分も同じものを身に着けたいと嬉しそうに言い出す。

「ああ、ああいうの流行ってるんだよな」

 乙哉がそう言うと皐月が昴を見上げた。

「どうします?」
「好きなの買ってやれ」

 昴があっさりと許可を出したことで一行はまず園内のショップへ向かうことになった。

 店内に入ると希海は並べられた帽子やカチューシャを夢中になって見て回る。

 そして暫く悩んだ末に一つの帽子を手に取った。

「これ! ぼく、これがいい!」

 それは犬の耳が付いた帽子だった。

 希海自身のものが決まりこれで終わりかと思ったのだが、

「おとくんはこれで、さっくんはこっち! パパはこれでういちゃんはこれね!」

 希海は次々と商品を指差して全員分を選び始めたのだ。

 どうやら自分だけが身に着けるつもりは最初からなかったらしい。

 予想外の展開に昴が思わず眉を寄せる。

「希海、お前だけ付ければいいだろ?」
「やだ! みんなでつけるの!」
「いや、俺は……」

 希海の言葉に昴が困ったように言葉を濁す。

 昴がこういうものを身に着ける柄ではないことは皆もよく分かっていたので乙哉が希海をなだめるように声を掛ける。

「希海、パパはこういうの苦手なんだよ。代わりに俺たちが付けるからさ。な?」
「やだ!」

 しかし希海は首を横に振る。

「パパも!」

 自分の思い通りにならないことが悲しくなってきたのか次第に目が潤み始め、今にも泣き出してしまいそうな希海を見た羽衣子は昴へ視線を向けて、

「昴さん、駄目ですか? 折角希海くんがお揃いの物を選んでくれたので……私も付けたいです」

 そう言って希海が選んだクマの耳が付いた帽子を手に取った。

 そして、少しだけ照れながら昴を見る。

「昴さんと一緒に……」

 その言葉に昴は何も言えなくなってしまった。
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