極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「……わ、分かった……今日だけ、だからな」

 昴が渋々そう答えると羽衣子と希海は嬉しそうに顔を見合わせた。

 乙哉と皐月は昴の返答に少し驚いていたものの、三人を微笑ましく思いながら見守っていた。

 乙哉が人数分の帽子やカチューシャを購入して来ると、昴は恥ずかしそうな表情のままクマの耳が付いた帽子を被った。

 その姿を見た希海は満足そうに笑い昴に抱き上げてもらうと、嬉しそうにその腕の中に収まり一行は園内を歩き始めた。

「希海くん、何から乗りたいんだっけ?」

 昴の隣を歩いていた羽衣子が尋ねると希海は少し考えるように周囲を見回した後、

「えっとねぇ……あれ!」

 少し離れた場所にある子供向けのコースターを指差した。

 しかし、怪我が治っていない昴は苦笑する。

「俺は乗れないから、みんなで行ってくるといい」

 子供向けとはいえ揺れるコースターに乗るのは今の昴には難しいのでそう告げると乙哉がすぐに口を開いた。

「あれは俺と皐月で乗ってくるんで、昴さんと羽衣子ちゃんは何か別のに乗るといいよ」
「そうですよ。折角ですから若頭(カシラ)も楽しまないと。コースターを乗り終えたら連絡しますので後で合流しましょう」

 どうやら乙哉と皐月は気を利かせて昴たちを二人きりにするつもりらしい。

「そうか。なら、そうさせてもらうか」
「え……?」

 昴の即答に驚いた羽衣子。

「希海、後で会おうな」

 そう言って昴は乙哉に希海を託しながら優しく声を掛ける。

「……うん、わかった」

 希海は素直に頷いたもののその表情にはほんの少しだけ寂しさが滲んでいて、それに気づいた乙哉が、

「大丈夫だって。コースターが終わったら今度はみんなで乗れるやつ探せばいいんだから」

 次はみんなで乗れるのを探そうと説得すると、

「……うん!」

 希海はすぐに笑顔を取り戻した。

「それじゃあ、希海を頼む」
「はい! 任せてください」

 こうして一行は二手に分かれて行動することに。

 残された羽衣子は少しだけ緊張したように隣に立つ昴を見上げる。

「何か乗りたいアトラクションはあるか?」
「……いえ、その、特には……」
「そうか、ならゆっくり話が出来るよう、観覧車にでも乗るか」
「はい」

 特に乗りたいアトラクションが無かったこともあり、落ち着いて会話が出来る観覧車に乗ることになった二人は手を繋いで歩いて行った。
< 186 / 200 >

この作品をシェア

pagetop