極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「……兄が、言ってくれたんです、『大丈夫、俺が付いてるから怖くないよ』って……」
羽衣子はぽつりぽつりと言葉を紡いだ。
「手を繋いでくれて……それでだんだん安心できて、降りた時には、『また乗りたい』って笑顔になっていました」
「そうか。それなら良かった」
昴はそう答えるとゆっくりと立ち上がり、羽衣子の隣へ腰を下ろす。
「昴、さん……?」
そして戸惑う羽衣子の肩をそっと抱き寄せた。
「無理に忘れる必要はないし、良い思い出まで記憶から消す必要もない。寧ろ楽しかった記憶や嬉しかった記憶は消すな。大切な思い出としてしまっておけばいい」
羽衣子は何も言わず昴の言葉に耳を傾けていく。
「それに、話したくなった時は、いつでも話していいんだ」
「……っ、昴さん……」
昴には分かっていた。
羽衣子が大切だった存在を無かったことになど出来ないことを。
それに、楽しかった時間や嬉しかった記憶まで否定する必要がないことも。
どんな人間にも大切な人がいる。
そして、その人と過ごした大切な思い出がある。
それは昴自身も同じだった。
「……人は、そう簡単に記憶を消せない」
昴は少しだけ視線を落としつつ静かに続けた。
「忘れたいと願っても、どうしても忘れられないことだってある」
「……昴さんにも、そういう人がいるんですか?」
羽衣子の問いに昴は一瞬だけ黙るも、ゆっくりと頷いた。
「……ああ。いる」
その声にはどこか懐かしさと寂しさが滲んでいた。
「それは……俺の母親だ」
「昴さんの、お母様が……」
「俺の両親はな俺が生まれてすぐの頃に、もう夫婦仲が破綻していたんだ。特に父親が酷い人間でな。酒に酔うと暴れて手がつけられなくなった。暴言も酷かったし……暴力を振るうこともあった」
羽衣子は息を呑みながらも黙って昴の横顔を見つめる。
「ただ……母親が、いつも俺を守ってくれた。お陰で俺が父親から直接危害を加えられることはほとんどなかったんだ」
そこまでの話を聞けばとても良い母親だったのでは無いかと羽衣子は思ったのだが、その後の話を聞けば聞く程、羽衣子の中に辛く悲しい感情が溢れてきた。
羽衣子はぽつりぽつりと言葉を紡いだ。
「手を繋いでくれて……それでだんだん安心できて、降りた時には、『また乗りたい』って笑顔になっていました」
「そうか。それなら良かった」
昴はそう答えるとゆっくりと立ち上がり、羽衣子の隣へ腰を下ろす。
「昴、さん……?」
そして戸惑う羽衣子の肩をそっと抱き寄せた。
「無理に忘れる必要はないし、良い思い出まで記憶から消す必要もない。寧ろ楽しかった記憶や嬉しかった記憶は消すな。大切な思い出としてしまっておけばいい」
羽衣子は何も言わず昴の言葉に耳を傾けていく。
「それに、話したくなった時は、いつでも話していいんだ」
「……っ、昴さん……」
昴には分かっていた。
羽衣子が大切だった存在を無かったことになど出来ないことを。
それに、楽しかった時間や嬉しかった記憶まで否定する必要がないことも。
どんな人間にも大切な人がいる。
そして、その人と過ごした大切な思い出がある。
それは昴自身も同じだった。
「……人は、そう簡単に記憶を消せない」
昴は少しだけ視線を落としつつ静かに続けた。
「忘れたいと願っても、どうしても忘れられないことだってある」
「……昴さんにも、そういう人がいるんですか?」
羽衣子の問いに昴は一瞬だけ黙るも、ゆっくりと頷いた。
「……ああ。いる」
その声にはどこか懐かしさと寂しさが滲んでいた。
「それは……俺の母親だ」
「昴さんの、お母様が……」
「俺の両親はな俺が生まれてすぐの頃に、もう夫婦仲が破綻していたんだ。特に父親が酷い人間でな。酒に酔うと暴れて手がつけられなくなった。暴言も酷かったし……暴力を振るうこともあった」
羽衣子は息を呑みながらも黙って昴の横顔を見つめる。
「ただ……母親が、いつも俺を守ってくれた。お陰で俺が父親から直接危害を加えられることはほとんどなかったんだ」
そこまでの話を聞けばとても良い母親だったのでは無いかと羽衣子は思ったのだが、その後の話を聞けば聞く程、羽衣子の中に辛く悲しい感情が溢れてきた。