極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「ひとまず――、一人になるのは不安でしょうから暫くの間、仕事終わりは乙哉に家まで送らせます」
「え……っ!? そ、そんな……そこまでしていただくわけには……」

 慌てて断ろうとする羽衣子に昴は微かに眉を寄せた。

「いいえ。何かあってからでは遅い」

 口調は少し強いものの押し切る言い方では無く、ただ純粋な心配からの言葉だと分かるからこそ、羽衣子はそれ以上言い返せなくなる。

 その様子に気づいた昴はすぐに表情を和らげた。

「……すみません、強く言ってしまって……ですが、心配なんです」
「心配……?」
「吾妻先生には日頃から希海のことでお世話になっていますし、そんな先生が危険な目に遭うかもしれないという状況を知って見て見ぬふりは出来ないですよ」
「…………」

 それが保育士として当然の言葉だと分かっていても、羽衣子の胸はどくんと大きく鳴った。

「……ありがとうございます。本音を言うと……一人になるのは少し怖いと思っていたので……助かります」

 鼓動を押し隠すように言葉を紡ぐと、昴は柔らかく頷いた。

「お任せください」

 話がひと段落した、その時だった。

「せんせー!」

 元気な声とともに寝室からリビングへ希海が飛び出してくると、そのまま勢いよく羽衣子に抱きついた。

「わっ……どうしたの?」
「おとくんとあそぶのあきた!」

 無邪気な一言に羽衣子は思わずくすりと笑う。

「じゃあ、今度は先生と一緒に遊ぼうか」
「うん!」

 それから暫くは穏やかな時間が流れ、やがて遊び疲れた希海は目をこすりながらふらふらと羽衣子にもたれかかった。

「……ねむい……」

 その様子に昴は小さく苦笑する。

「そろそろ限界のようですね」

 そう言ってそっと抱き上げると乙哉へ視線を向けた。

「乙哉、このまま希海を寝かせてくれ。俺は吾妻先生を送ってくる」
「了解しました~」

 慣れた様子で希海を受け取った乙哉は寝室へと向かう。

 その背中を見送った後、昴は羽衣子へと向き直った。

「では、送ります」
「……ありがとうございます」

 羽衣子の中の不安が消えたわけではないし、帰れば一人になるという怖さは残っている。

 けれど、昴が力になってくれるという事実が、その重さを軽くしていた。

 羽衣子は小さく息を整えると昴と共にマンションを後にした。
< 19 / 117 >

この作品をシェア

pagetop