極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 湯に浸かりながら羽衣子は未だに治まらない恥ずかしさをどうにか落ち着かせようとしていた。

(さっき昴さんは冗談だって言ったけど……あれって、本当は本心だったのかな……)

 一緒に入らないのかと言われた時は恥ずかしさのあまり狼狽えてしまった羽衣子だけど、今になって考えてみれば二人で温泉旅行に来ていて部屋には露天風呂まであるこの状況下、普通の恋人同士なら一緒に入ることは決して不自然なことではないのかもしれないと思い直す。

(……次は、一緒に入った方がいいのかな?)

 後一度か二度くらいは温泉に入る機会があるだろう。

 その時も別々に入るべきなのか、それとも――。

(でも昴さんはきっともう冗談を言ったりしないだろうし……かといって、私から誘うだなんて……)

「……出来ないよ……」

 小さく呟いた羽衣子は頬を両手で覆った。

 結局答えが出ないまま湯から上がることになった。

 昴と入れ替わるように部屋へ戻ると浴衣を整えながら彼が出てくるのを待つ。

 その間も先程のことを考えてしまっていたが昴が上がったのとほぼ同時に料理を運んでいいかという確認の連絡が来たことで、羽衣子はひとまずそのことを頭の片隅へ追いやった。

「豪華な料理……」

 目の前に並べられた料理を見て、思わず瞳を輝かせる羽衣子。

「そうだな」

 昴も料理へ視線を向けたけれど、すぐに羽衣子へ視線を戻して穏やかな声で言った。

「まあ俺は羽衣子が作る料理が一番好きだから、この程度じゃ喜べねぇな」
「昴さん……」

 あまりにもさらりと言われて羽衣子は頬を赤くする。

「そういうの、狡いです……」
「俺は本当のことを言っただけだ」
「うう……」

 嬉しいけれど、嬉し過ぎてどう反応すればいいのか分からない羽衣子。

 昴はいつも、こうして羽衣子が欲しい言葉や喜ぶ言葉を惜しみなく与えてくれる一方で羽衣子はふと思うのだ。

(私……昴さんにしてもらってばかりだな……)

 自分も何かを返せたらいいのに、そんなことを考えながら二人はゆっくりと食事を楽しんだ。
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