極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 週末の夜、友人との飲み会の帰りに繁華街を歩いていた時だった。

 ふと、羽衣子の視界に見覚えのある後ろ姿が入る。

(……あれ?)

 街灯に照らされたその姿は昴にそっくりだったけれど、どこか違和感があり彼の周囲には数人の男たちが控えるように立っていた。

 どの男も無口で鋭い視線を持ち、ただそこにいるだけで空気が張り詰めるような存在感を放っている。

(……何、あれ……)

 男たちに囲まれるようにして立つ昴らしき人物はいつも見ている彼とはまるで別人のよう。

 無駄のない所作に冷静でどこか冷えた眼差し。

 一言で表すならば、

(……ヤクザっぽい……?)

 彼は極道関係の人間なのでは無いかーーそんな言葉が頭に浮ぶもすぐに打ち消した。

(やっぱり、あれは他人の空似だよね……)

 昴に良く似てはいるけれど、希海の父親の昴は優しくて真面目でとても素敵な男の人だ。

 そんな人があんなに冷たい表情をする訳が無い。

 あんなに怪しげな人たちと行動を共にする訳が無い。

 そう自分に言い聞かせるけれど、何故か視線を逸らせずにいる羽衣子。

 そんな中、ほんの一瞬昴らしき男の人がこちらに顔を向けた気がした羽衣子ははっと我に返り、

(……ダメ、見てたら怪しまれちゃう)

 咄嗟に視線を逸らすと、踵を返し慌ててその場を離れて行った。

 週明け、

「せんせ!」

 登園して来た希海が嬉しそうに羽衣子に駆け寄ってくる。

「おはよう、希海くん。今日も一緒に遊ぼうね」

 頭を撫でながら微笑むも心の奥は落ち着かないまま、気づけば希海の後を追ってやって来た昴に視線を向ける。

「おはようございます」
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

 丁寧に頭を下げるその様子に違和感はどこにもない。

(……やっぱり、あれは別人だよね)

 そう思おうとしたその時、ふと視線が合った。

「……どうか、しました?」

 静かに問いかけられた羽衣子は息を呑む。

 どうやら無意識にじっと見つめてしまっていたらしい。

「あ、いえ……すみません、何でもないです」

 慌てて目を逸らすけれど、昴は少しだけ首を傾げ、

「そうですか」

 とやわらかく微笑んだ。

(……もう忘れよう、あの日のことは)

 そう思い込もうとする程に胸のざわめきは消えずに頭の中で重なって、どうしても頭を離れない。

 その影響からか、羽衣子は自分でも気づかないうちに事ある毎に昴のことを目で追うようになっていった。
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