極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 ベッドの上に腰を下ろしていた昴の元へ羽衣子はゆっくりと歩いて行くと、その隣にちょこんと腰を下ろす。

「さっきは……悪かったな」
「いえ……」

 それ以上の言葉は続かず、二人の間に気まずい沈黙が落ちる。

 そんな中、昴がふっと息を吐いてから口を開いた。

「今日はこうしてお前と旅行に来られて良かった。慶太さんと香恵さんにもお前を紹介出来たしな」
「私も……良かったです。昴さんと希海くんの大切な方にご挨拶が出来たし、こんなに素敵な旅館に泊まれたので」
「…………羽衣子」
「はい?」

 名前を呼ばれて羽衣子が顔を向けると、昴は真剣な眼差しで彼女を見つめた。

「俺は今日、お前に言いたいことがある」
「……私に?」
「ああ。聞いてくれるか?」

 いつになく真剣な声音に羽衣子の胸が小さく高鳴った。

「……はい」

 羽衣子が頷くと昴はゆっくりと言葉を紡いでいく。

「俺は希海を引き取ると決めてから、ずっと希海を幸せにすることだけを考えてきた。異性に興味を持つこともなかったから、一生独りでもいいと思ってた。だけど……お前と出逢ってから、その考えは徐々に変わっていった」
「…………」
「羽衣子が近くに居るだけで不思議と暖かい気持ちになった。もっと一緒にいたい、離れたくない……離したくないって、そう思うようになった。だからこそ、お前のことを抱いたし、この先も傍にいることを選んだ」

 昴の言葉に羽衣子の胸がトクンと大きく鳴った。

「ただ……希海のことをお前にまで背負わせるのは違うんじゃないかって思っていたのも事実だ」
「昴……さん?」
「だけど、お前は希海のことを、どんな時でも大切に思ってくれているし、希海もお前のことが大好きだ……。そして……俺も、同じ気持ちだ」

 昴はそこで言葉を区切ると、ベッド脇に置かれたチェストへ手を伸ばして小箱を取り出した。

 それを手にした瞬間、昴の表情が更に真剣なものになる。

「羽衣子」
「……はい」
「俺はこれからも、お前と一緒にいたい」

 そう言って昴は小箱の蓋に手をかけた。

「どんなことがあっても必ずお前を守るし、誰よりもお前を幸せにする」

 そしてゆっくりと蓋が開かれた瞬間、羽衣子の瞳が大きく見開かれた。

「羽衣子――俺と結婚して欲しい。そして、これから先も共に希海の成長を見届けて欲しいんだ」

 静かな部屋にその言葉だけがはっきりと響く中、羽衣子は目の前の昴と小箱の中で光輝くモノを潤んだ瞳で見つめていた。
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