極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 辿り着いた先は緑豊かな木々に囲まれた静かな墓地で、奥へと進んでいくと綺麗に手入れされて一輪の花が供えられた墓石の前で羽衣子が足を止める。

「…………」

 墓石を見つめたまま羽衣子は何かを思い出すように黙り込んでしまい、そんな羽衣子の様子を不思議に思った昴が隣から声を掛けた。

「どうかしたのか? ご両親の墓はこれでいいんだな?」
「あ、はい、そうです……その、誰かが来て綺麗にしてくれたんだと思って……」
「叔父さんじゃないのか?」
「そう、ですね……そうかもしれません」

 昴の言葉に頷きながらも羽衣子の胸には小さな疑問が残っていた。

 墓石の前に供えられた一輪の花。

 それは両親が好きだったピンクのスイートピーだった。

 この花は兄と二人で相談して両親への贈り物として選んだ花で、プレゼントを受け取った両親が嬉しそうに微笑んでいた姿を今でも鮮明に覚えている。

(……この花を供える人なんて……私とお兄ちゃんしかいないはずなのに……どうして?)

 胸の奥に疑問が残る。

 想汰は昴たち七鳳組に拘束され、処遇を任された昴が兄をどうしたかは羽衣子もハッキリとは分からない。

 けれど、恐らくもうこの世に居ないはずだと思っていた。

(お兄ちゃんは……生きてるの? それとも両親がスイートピーの話を誰かにしていた?)

 考えれば考える程答えの出ない疑問ばかりが浮かんでくる中で、隣に立つ昴は羽衣子の胸中渦巻く思いには気づいていなかった。

(……叔父さん、知ってたのかな? きっと、そうだよね)

 これ以上考えたところで答えが出ることも無いだろうと納得した羽衣子が考えるのを止めた横で、墓石の前に立った昴は静かに一礼した。

 そして、まるで目の前に羽衣子の両親がいるかのように墓石を見つめながら口を開いた。

「初めまして、京極 昴と申します。羽衣子さんとお付き合いさせていただいていて、このたび結婚することになりました。お二人が大切に育ててこられた羽衣子さんのことは、これから俺が責任をもって幸せにしていきます。ですからどうかこれからも見守っていただけると幸いです」

 そう告げると昴はもう一度丁寧に頭を下げるその隣で、羽衣子は昴の横顔を見つめていた。

 両親に向けて真剣に挨拶をしてくれる姿が嬉しく、瞳には熱いものが込み上げそうになっていた。
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