極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 当時、兄は十歳で羽衣子はまだ五歳。

 幼い二人を引き取り、育てていくことが決して簡単なことではなかったのは想像に難くない。

 それでも叔父は自分たちを引き取ってくれた。

 何故、叔父はそうしてくれたのか。

 その理由だけは今まで一度も聞いたことがなかったのだ。

「もちろん、私も最初は施設に預けるのがいいんじゃないかと思っていたんだよ。けれど詳しく話を聞いてみたら受け入れてくれる施設は定員の関係で、兄妹を別々に預けることになるって分かってね」

 叔父の声がわずかに沈む。

「当時十歳だった想汰はしっかりした子だったから環境が変わっても何とかやっていけたかもしれない……でも羽衣子はまだ五歳……両親や想汰のことが大好きでいつもベッタリだった羽衣子が一人になるなんて可哀想だと思ったんだ」
「…………」

 羽衣子は何も言えずに叔父の話に耳を傾けていた。

「両親が亡くなったことだってまだ十分に理解出来ていないのに、大好きな想汰とまで離れ離れになってしまったら不安でたまらなかったと思うんだ」

 叔父はそこで一度言葉を切り、ゆっくりと息を吐いた。

「それに、そんなことを兄貴や義姉(ねえ)さんが望んでいるとも思えなかった……そう考えたら、どうしても放っておけなくなってしまってね」

 少し照れくさそうに笑った叔父は当時の自分を振り返るように続けた。

「気づいたら、『俺が二人を引き取って育てる』って言っていたんだよ」
「……叔父さん……」

 羽衣子の声がかすかに震えた。

 自分たちを引き取る決断に至るまでに、叔父がどんなことを考え、悩んだのかは知らなかった。

 まだ二十七歳だった叔父にとって幼い兄妹二人を引き取って育てていくことがどれほど大きな決断だったのか、今ならその重みが少しだけ分かる気がした。

 そして昴もまた、叔父の言葉を静かに受け止めていた。

 自分の子供ではない子供を育てるということは、優しさだけで成し遂げられるものではない。

 これから先の生活も子供の未来も背負っていくという覚悟が必要なのだ。

 叔父はその覚悟を持って羽衣子と想汰を育ててきたからこそ、自分が子供を育てていることについては理解してくれているのだと。
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