極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 その後、今後のことについて話を進めていると、玄関の方から何やら物音が聞こえてきた。

 バタバタと慌ただしい足音が近づいてきたかと思うと一人の女性が姿を見せる。

「ああ、良かったぁ、間に合って!」

 両手に買い物袋をぶら下げた女性は安堵したように大きく息を吐いた。

 短く整えられた髪と聡明そうな顔立ちが印象的な女性だった。

「叔母さん」

 羽衣子が声を掛けると女性はぱっと表情を明るくした。

「羽衣子ちゃん、久しぶりね」

 彼女は叔父――吾妻 幹人(みきと)の妻であり羽衣子にとって叔母にあたる吾妻 好美(よしみ)だった。

 二人が籍を入れたのは羽衣子が二十歳を迎えた頃の為、羽衣子と好美の付き合いはそれほど長くない。

 それでも、好美は羽衣子や想汰の事情を全て理解した上で幹人と一緒になった女性で、羽衣子にとっては叔母というよりも、少し年上の頼れるお姉さんのような存在だった。

「ごめんなさいね。こんな大切な日なのに仕事が休めなくて……」

 申し訳なさそうに眉を下げる好美に羽衣子は慌てて首を横に振った。

「いえ、そんな……お仕事ですから気にしないでください」
「好美、ひとまず落ち着きなさい。京極さんが戸惑っているだろう」

 見かねた幹人が声を掛けると好美はそこでようやく羽衣子の隣に座る昴へ視線を向けた。

「え? あ、あなたが羽衣子ちゃんの!」
「ああ、はい」

 突然話を振られた昴が返事をすると好美は昴の顔をまじまじと見つめた後で感心したように声を上げた。

「あらあら、とても男前で素敵な方じゃない! 羽衣子ちゃんも隅に置けないわねぇ」
「好美……」

 呆れたような幹人の声に好美ははっと我に返る。

「あ、ごめんなさいね。つい嬉しくなっちゃって」
「京極さん、騒がしくしてすまないね」
「いえ、大丈夫です」

 昴が苦笑交じりに答えると幹人は改めて妻である好美を紹介した。

「私の妻で羽衣子にとっては叔母にあたる好美だ」
「吾妻 好美です。叔母と言っても羽衣子ちゃんが家を出てからのお付き合いだから、私は大したことは出来ていないんだけどね……」

 そう言って好美は羽衣子へと目を向けると優しく微笑んだ。

「でも、幹人さんが羽衣子ちゃんを大切に育ててきたことは聞いているから、今回のお話は私にとっても本当に嬉しいのよ。羽衣子ちゃん、本当におめでとう」
「ありがとうございます、叔母さん」
「えっと……京極さん、でよろしいのかしら?」
「あ、はい。京極 昴と申します」
「ご丁寧にどうも。羽衣子ちゃんのことよろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 こうして、突如現れた好美の勢いにやや押され気味ではあったものの、無事に挨拶と報告を済ませることが出来た昴。

 羽衣子の大切な家族に認めてもらえたことに昴は安堵し、そっと胸を撫で下ろすのだった。
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