極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
(……京極さんの言い分は分からないでも無いけど……お兄ちゃんのことを聞いてくるなんて……お兄ちゃんのこと、疑ってるんだ……確かに、私も少しそういう節はあったけど……)

 昴が心配から先程の質問をしたことは羽衣子も頭では理解しているものの、やはり唯一の肉親が疑われるのは少し複雑な心境だったようで、どこかモヤモヤした思いが胸に燻っていき、それから暫くして羽衣子のアパートへと到着した。

「着きましたよ」
「……ありがとうございます」

 お礼を口にしながら羽衣子はシートベルトを外してドアに手をかける――が、しかし、その手がふと止まった。

「…………」

 羽衣子は無意識のうちに外へ出ることを躊躇っているようで、その様子に昴がいち早く気づいた。

「……どうかしましたか?」

 穏やかな声で問いかけられた羽衣子はハッと我に返ると一瞬迷った後、意を決したように口を開いた。

「……実は……昨日、広瀬さんを見送って玄関の前で鍵を開けていた時、誰かに見られてるような気がして……」
「……視線を感じた、ということですか?」
「はい……でも、振り返ったら誰もいなかったんですけど……」

 不安げに言葉を続ける羽衣子を前に昴の表情が微かに険しくなり、窓の外から辺りを見回していく。

「気のせいならばいいですが、心配ですね。ひとまず、今後は吾妻先生が部屋に入るまで見届けますから安心してください」
「え?」
「乙哉にはそう伝えておきます。今日は私が部屋の前まで一緒に行きますから安心してください。車はどこに停めたらいいですか?」
「いえ、そんな! ここで大丈夫ですから!」

 わざわざ部屋の前まで来てもらうなんて申し訳ないという思いから断ろうとする羽衣子を前に昴は、

「吾妻先生はひとり暮らしですよね? もし玄関先で襲われ、部屋の中へ押し込まれでもすればすぐには助けられない。常に万が一を考えて動かなければ危険は回避出来ません。どんなに小さなことでも不安がある以上先手を打って動かなければいけないと、私は思います」

 諭すように言葉を紡いでいった。
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