極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「……分かりました。それじゃあ、車は右から二番目のスペースにお願いします」

 納得して頷いた羽衣子が車を停める場所を伝えると、昴は指示された通りに車を移動させてエンジンを切る。

「では行きましょうか」
「……ありがとうございます」

 二人は車を降りると並んで階段を上がっていく。

 申し訳なさは残るものの昴が隣にいることで安心感から羽衣子の足取りは軽い。

 部屋の前に着くと、羽衣子は鍵を開けて扉を開く。

「視線も感じませんし、今日は大丈夫そうですね。それでは、また明日」

 特に問題が無さそうだと分かった昴がそう告げて踵を返しかけた、その時だった。

「あの……!」

 思いがけず呼び止められた昴は足を止めて振り返る。

「はい?」
「……その、もしお時間がありましたら……少しだけ、寄っていきませんか? 飲み物くらいしかお出し出来ないですけど……」

 遠慮がちに紡がれた言葉に昴は一瞬だけ考えるように沈黙した後、

「……それでは、少しだけ」

 折角の誘いだからと受けることにしたようで、その返答に羽衣子はホッとしたように微笑んだ。

「お邪魔します」
「どうぞ。適当に座っていてください」

 羽衣子は荷物を置くと、そのままキッチンへ向かい、昴は促されるままリビングのソファーに腰を下ろした。

 ただ、今この状況ーーむしろ昴にとっては好都合だった。

 その背景には想汰がこの部屋を訪れていたことにある。

 ずっと音信不通だったのに突然接触を図ろうとして来たという話を聞いた時から怪しんではいたものの、とある人物からの報告を受けて以降、想汰に対して更に疑念を抱いていた昴。

 もし想汰に何らかの意図があって羽衣子に接触をして来たことを想定すると、訪問した際、彼女の隙を見て盗聴器や隠しカメラを仕掛けたかもしれないと考えていた。

 昴は羽衣子の様子を窺いながら、ゆっくりと部屋の中へ視線を巡らせていると、コーヒーカップを二つ持ってリビングへやって来た羽衣子が向かい側に座る。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 昴は差し出されたカップを受け取ると軽く口をつけるが、その間も周囲へと意識が向けられていた。
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