極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
裏切り
あの日、盗聴器が見つかってからというもの羽衣子の中で兄に対しての不信感が、じわじわと広がっていった。
そして、金曜日に兄と会う約束をしていることが、今の羽衣子にとって不安でしかなかった。
そんな中、木曜日の昼間に兄からメッセージが届く。
《明日は駅の改札前に19時でいいよな?》
返信しなければと思いながらも指が動かない。
(……どうしよう……)
迷い続けたまま時間だけが過ぎていき、気付けば仕事が終わり帰る時間になっていた。
「……いい加減返さないと……」
小さく呟きながらスマートフォンを手に羽衣子は園の外へ出る。
迎えが来ているはずの場所へと足を向けると、停まっていた車の運転席から顔を覗かせたのは昴だった。
「京極さん? あの、もしかして広瀬さんはまた何か用事が?」
羽衣子がそう尋ねると昴は柔らかく微笑んだ。
「いえ。希海を迎えに行った際、吾妻先生が不安そうな表情をされていましたので、何か力になれることはないかと思いまして。途中乙哉に希海を任せて来ました」
その言葉を聞いた瞬間、羽衣子の胸が小さく高鳴った。
(どうして……そんなことまで……)
驚きと同時に、じんわりと温かいものが胸の奥に広がる。
促されるまま車に乗り込みシートベルトを締めると、昴は静かに車を発進させた。
暫く無言の時間が流れる中、羽衣子は視線を落とし、迷うように指先でスマートフォンをなぞりながら、やがて口を開いた。
「実は……あの日から……その……兄のことが、少し……怖くなってしまって……」
昴は何も言わず、ただ静かに耳を傾けていた。
「何か理由があるのかもしれないけど……でも、盗聴器なんて……どうしてって……」
言いながら羽衣子はスマートフォンをぎゅっと握りしめる。
「明日も……正直、不安で……。昼間に連絡が来てるのに、返せなくて……」
その声は微かに震えていた。
羽衣子が話し終えて黙った少し後、昴が落ち着いた声で言う。
「……明日、もし何か不安なことがあったら、すぐに私に連絡してください」
その言葉に羽衣子は顔を上げた。
「えっ……でも、そこまでご迷惑を掛けるわけには……」
戸惑う羽衣子に昴は小さく首を横に振る。
「以前にも言いましたが……心配なんですよ」
ちょうど信号が赤に変わり車が静かに停止すると、昴はゆっくりと羽衣子の方へ視線を向けて真っ直ぐに見つめた。
「ですから、ね? 遠慮せずに頼ってください」
その言葉で、羽衣子の張り詰めていた心がほんの少しだけ解けていく。
「……ありがとうございます」
小さく呟いた羽衣子は手にしていたスマートフォンを操作して兄とのトーク画面を表示すると、意を決したように指を動かした。
《……うん、19時で大丈夫》
そして、短い返事を打ち込み送信ボタンを押してメッセージが送られたのを確認したその瞬間、羽衣子は小さく息を吐く。
信号が青に変わり昴は再び車を走らせると、羽衣子はチラリとその横顔を盗み見た。
(……京極さん、どうしてここまで色々してくれるんだろう……。でも、本当に助かるな……)
特定の保護者とプライベートで会ったりしてはいけないと分かっていながらも、今の羽衣子にとって昴という存在は確かな支えになっていた。
そして、金曜日に兄と会う約束をしていることが、今の羽衣子にとって不安でしかなかった。
そんな中、木曜日の昼間に兄からメッセージが届く。
《明日は駅の改札前に19時でいいよな?》
返信しなければと思いながらも指が動かない。
(……どうしよう……)
迷い続けたまま時間だけが過ぎていき、気付けば仕事が終わり帰る時間になっていた。
「……いい加減返さないと……」
小さく呟きながらスマートフォンを手に羽衣子は園の外へ出る。
迎えが来ているはずの場所へと足を向けると、停まっていた車の運転席から顔を覗かせたのは昴だった。
「京極さん? あの、もしかして広瀬さんはまた何か用事が?」
羽衣子がそう尋ねると昴は柔らかく微笑んだ。
「いえ。希海を迎えに行った際、吾妻先生が不安そうな表情をされていましたので、何か力になれることはないかと思いまして。途中乙哉に希海を任せて来ました」
その言葉を聞いた瞬間、羽衣子の胸が小さく高鳴った。
(どうして……そんなことまで……)
驚きと同時に、じんわりと温かいものが胸の奥に広がる。
促されるまま車に乗り込みシートベルトを締めると、昴は静かに車を発進させた。
暫く無言の時間が流れる中、羽衣子は視線を落とし、迷うように指先でスマートフォンをなぞりながら、やがて口を開いた。
「実は……あの日から……その……兄のことが、少し……怖くなってしまって……」
昴は何も言わず、ただ静かに耳を傾けていた。
「何か理由があるのかもしれないけど……でも、盗聴器なんて……どうしてって……」
言いながら羽衣子はスマートフォンをぎゅっと握りしめる。
「明日も……正直、不安で……。昼間に連絡が来てるのに、返せなくて……」
その声は微かに震えていた。
羽衣子が話し終えて黙った少し後、昴が落ち着いた声で言う。
「……明日、もし何か不安なことがあったら、すぐに私に連絡してください」
その言葉に羽衣子は顔を上げた。
「えっ……でも、そこまでご迷惑を掛けるわけには……」
戸惑う羽衣子に昴は小さく首を横に振る。
「以前にも言いましたが……心配なんですよ」
ちょうど信号が赤に変わり車が静かに停止すると、昴はゆっくりと羽衣子の方へ視線を向けて真っ直ぐに見つめた。
「ですから、ね? 遠慮せずに頼ってください」
その言葉で、羽衣子の張り詰めていた心がほんの少しだけ解けていく。
「……ありがとうございます」
小さく呟いた羽衣子は手にしていたスマートフォンを操作して兄とのトーク画面を表示すると、意を決したように指を動かした。
《……うん、19時で大丈夫》
そして、短い返事を打ち込み送信ボタンを押してメッセージが送られたのを確認したその瞬間、羽衣子は小さく息を吐く。
信号が青に変わり昴は再び車を走らせると、羽衣子はチラリとその横顔を盗み見た。
(……京極さん、どうしてここまで色々してくれるんだろう……。でも、本当に助かるな……)
特定の保護者とプライベートで会ったりしてはいけないと分かっていながらも、今の羽衣子にとって昴という存在は確かな支えになっていた。