極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 昴たちと共に部屋へ入ると、

「荷物は全てこの部屋に運んでありますんで、後で確認してください」

 そう言いながら顔を覗かせたのは乙哉だった。

「あ……ありがとうございます」

 羽衣子が頭を下げた、その時だった。

「せんせ、あそぼ!」

 希海が早速羽衣子の手を掴み、ぐいぐいと引っ張る。

「えっ、あ……でも、荷物の整理しないと……」

 困ったように笑いながらやんわり断ろうとするも、昴が穏やかな声で口を開いた。

「少しだけ、希海と遊んでやってもらえますか? 引っ越して来ることを知ってからずっと、一緒に遊ぶのを楽しみにしていたようなので」

 昴は隣ではしゃぐ希海へ視線を向け、柔らかく目を細める。

 その言葉に羽衣子は小さく目を瞬かせ、

「……分かりました。それじゃあ希海くん、遊ぼっか」

 片付けは後でにして希海と遊ぶことに決めた。

「やったー!」

 希海は嬉しそうに声を上げると、羽衣子の手を引いてリビングの一角にある玩具箱へ向かって行く。

「せんせ、これみて!」
「わあ、すごい。沢山玩具があるね」
「うん!」

 無邪気にはしゃぐ姿を見ながら羽衣子も自然と笑顔になる。

 そんな様子を眺めていた乙哉が、ふと思い出したように口を開いた。

「でも、“せんせ”って呼び方、変えた方がよくないっすか?」
「え……?」

 その言葉に、羽衣子がきょとんと目を向ける。

「もう先生じゃないんですし」
「あ……」

 言われてみれば、その通りだった。

 もうこれからは保育士として希海と関わる訳ではなく、寝起きを共にする家族のような存在になる訳で、いつまでも保育士だった頃の呼び名をそのまま使い続けるのは違うかもしれない。

(でも……何て呼んでもらえば……?)

 迷っていると、昴が希海に視線を合わせながら穏やかに話しかけた。
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