極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
真相
(血縁関係が、無い? ってことは、希海くんは京極さんの子供じゃ、ないの?)

 羽衣子の頭の中が一気に混乱する。

 けれど、表情だけはどうにか取り繕おうとして羽衣子は唇をきゅっと結んだ。

(それなら希海くんは……奥さんの連れ子……だったとか?)

 そんな考えが浮かんだ直後だった。

 昴は静かに視線を伏せ、低く落ち着いた声で続ける。

「希海は、私にとって、とても大切な夫婦の子供だったんです」
「……大切な、夫婦……?」

 羽衣子は呆然とその言葉を繰り返した。

「それじゃあ、希海くんは、京極さんの奥さんの連れ子とかでも無くて……全く、他人の……」
「ええ、そうです」

 昴は真っ直ぐ羽衣子を見つめたまま、はっきりと頷いた。

「希海は、私が兄のように慕っていた方と、その奥様の子供なんです」
「…………っ」

 予想だにしなかった話に、羽衣子の思考は完全についていけなくなっていた。

 自分が思っていた以上の事実が明らかになってしまったから。

 その時――その言葉を聞いた瞬間、別の疑問がふと浮かぶ。

「じゃ、じゃあ……京極さんは、結婚されていなかったんですか……?」

 羽衣子は自分でも場違いだと思う問いだったのだが、気づけば口から零れてしまっていた。

 すると昴は少しだけ目を細め、淡々と答えた。

「ええ。結婚どころか、そもそも相手がおりませんから」
「……そう、だったんですね」

 その答えに羽衣子の胸が微かに熱を帯びる。

 こんな話をしている最中なのに不謹慎だと思いながらも、どこか安心してしまった自分がいた。

 けれど、今はそんなことを考えている場合ではない。

 羽衣子はぎゅっと膝の上で手を握り締めると、意を決したように口を開いた。

「その、希海くんの……本当のお父さんとお母さんは……」

 一瞬の沈黙の後、昴は静かに告げる。

「二年半前に亡くなりました」
「……っ」
「組織の抗争に、巻き込まれる形で……」

 低く押し殺した声音に、空気が重く沈む。

 羽衣子は息を呑んだまま動けなかった。

「兄のように慕っていた郡司(ぐんじ) 慶太(けいた)さんは、七鳳組の若頭を務めていた方でしたので……」
「…………」

 まるで別世界の話を聞かされているようだった。

 抗争とか、それに巻き込まれて命を落とすとか、どれも現実味の無い話なのに、昴の静かな声が、それは紛れもない現実なのだと羽衣子に突きつけていた。
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