極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「吾妻さんのせいじゃない」

 昴は泣きそうな顔をしている羽衣子を真っ直ぐ見つめる。

「これは吾妻さんのせいじゃないので、これ以上自分を責めないでください」
「でも……っ」

 羽衣子が言葉を詰まらせると、昴はゆっくり続けた。

「この件については、もう吾妻さんとお兄さんだけの問題じゃないんです」
「…………」
「組織が関わってしまっている以上、私たちにとっても見過ごせることではない。だから……これ以上、自分を責めるのはやめてください」
「……っ」

 優しく諭すような声に羽衣子は唇を噛んだ、その時だった。

「うわぁぁんっ……!!」

 突然、ベッドの方から大きな泣き声が響いた。

「希海くん!?」

 羽衣子と昴が慌てて振り返ると。目を覚ました希海が涙をいっぱい溜めた目で辺りを見回していた。

「ういちゃぁ……っ、パパ、っこわいぃ……!!」

 どうやら、先程の出来事を思い出してしまったらしい。

 幼い子供には十分過ぎるほど恐ろしい記憶だから無理もない。

「大丈夫、大丈夫だよ」

 羽衣子は急いで駆け寄り希海を抱き締めると、希海は震えながら羽衣子にしがみついた。

「こわい……っ、やだぁ……!」

 そこへ、昴が静かに口を開く。

「……吾妻さん」
「はい……?」
「希海と一緒に寝てやってくれませんか?」

 羽衣子は少し目を見開いた後、すぐに頷いた。

「……分かりました。希海くん、一緒に寝よう? ギュってしながら寝れば怖くないから。ね?」
「……っ、ひっく……うん……」

 しゃくり上げながらも、羽衣子の言葉に希海は小さく頷き、羽衣子は希海と一緒に眠る為、昴たちのベッドを使わせてもらうことになった。

「すみません……ベッド、失礼します」
「お気になさらず。こちらこそ、無理を言ってしまって」
「いえ……」

 羽衣子はそっとベッドへ横になり、希海を抱き寄せる。

 すると、希海が不安そうに辺りを見回した。

「……パパは?」
「パパはリビングの方で寝るからな」

 希海の頭を撫でながら昴がそう答えるも、希海はぶんぶんと首を横に振った。

「やだっ! パパもいっしょがいい!!」
「希海……」

 いつもなら、ここまで駄々をこねることはない。

 それだけ、怖かったのだろう。

「パパも!! いっしょがいい!!」

 涙目のまま訴える希海を前に昴が困ったように眉を寄せる中、羽衣子がおずおずと口を開いた。

「あの……」
「はい?」
「とりあえず、希海くんが眠るまでの間だけ……京極さんもベッドへ横になってくれませんか?」

 その言葉に昴が僅かに目を見開く。

「そうすれば、希海くんも安心すると思いますし……」
「……いや、ですが……」

 一瞬だけ迷うような沈黙の中、確かにそれも一理あると考えた昴。

 何より希海がこのままでは落ち着きそうになかったこともあり昴は、

「……分かりました。それでは、少しだけ失礼しますね」

 希海が眠るまでの間だけ、ベッドへ入ることを決めた。

 広めのベッドとはいえ、大人二人と子ども一人で横になると流石に距離が近い。

 真ん中に希海、その両側に羽衣子と昴、自然と三人で川の字のような形になる。

 すると、希海は安心したのか片方の手で昴の手を握ると、もう片方の手は羽衣子の手を握る。

「……みんないっしょ! これで、こわくない……」

 羽衣子はそんな希海の頭を優しく撫でながら、「うん」と微笑み、「そうだな、怖くないな」と昴も声を掛けた。
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