極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
リビングに残された羽衣子は、どこか落ち着かない気持ちのまま紅茶のカップを両手で包み込んだ。
(……京極さんって、やっぱり……)
先程の表情がどうしても頭から離れず、思い切って聞いてみようかと羽衣子は向かいにいる乙哉へ視線を向けた。
「あの、広瀬さん――」
そして羽衣子が口を開きかけたその時、寝室の方から再び泣き声が響いてきた。
「うぇ……っ、パパ……っ、せんせ……っ」
「あー……」
乙哉が頭を掻きながら顔を顰める。
「やべ、希海、目覚ましちまった……。先生、お願い出来ますか?」
「え? あ、はい……」
乙哉の問い掛けに反射的に頷いた羽衣子は慌てて寝室へ向うとベッドの上で希海は不安そうに泣いていた。
眠りが浅かったのか、再び気持ちが不安定になっているようだ。
「希海くん、大丈夫だよ」
そっと声をかけながら羽衣子は再び側に座る。
「先生、ここにいるからね」
優しく頭を撫でると、希海は涙を浮かべながらも少しずつ呼吸を落ち着かせていく。
そのまま羽衣子は何度も声を掛け続け、昴の電話が終わるまでの間ずっとあやしていた。
そして再び静かな寝息が聞こえ始めた頃、
「……すみません」
背後から小さく声が掛かり、羽衣子が振り返ると電話を終えた昴が申し訳なさそうな表情を浮かべて立っていた。
そこに先程の鋭い雰囲気は全く無い。
「また吾妻先生に頼ってしまって……」
「お気になさらないでください……さっきよりは落ち着いたみたいですし、もう大丈夫かと思います」
小声でやり取りを交わした羽衣子はそっと立ち上がり、寝室を後にする。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、少しでもお役に立てたなら……」
「すっかり遅くなってしまって……送りますね。乙哉、希海のこと、頼むな」
「了解」
「え、でも――」
「せめて、それくらいはさせてください」
「……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
昴の穏やかだが譲らない口調に羽衣子は小さく頷いた。
マンションを出て羽衣子の住むアパートまで車を走らせていく車内では、日々の希海の保育園での様子などを羽衣子から聞いた昴は時折笑顔を見せる。
それから三十分程経った頃、アパート前で車を降りた羽衣子は改めて頭を下げた。
「本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ助かりました」
「希海くん、早く良くなると良いですね」
「ありがとうございます。では、失礼します」
「はい、お気をつけて」
短い言葉を交わした後、昴の車が静かに去っていくのを羽衣子は見送った。
それから自宅のアパートへと足を向けた羽衣子は集合ポストの前で立ち止まり、中を開けて確認すると数枚のダイレクトメールに混じって一通の封筒が目に入った。
手に取って見ると、そこには見覚えのある筆跡で宛名が書かれていて、裏返して送り主の名前を見た瞬間、羽衣子の指が僅かに震えていた。
「……え……」
手紙の差出人、それは――数年前から音信不通になっていた実の兄だった。
(……京極さんって、やっぱり……)
先程の表情がどうしても頭から離れず、思い切って聞いてみようかと羽衣子は向かいにいる乙哉へ視線を向けた。
「あの、広瀬さん――」
そして羽衣子が口を開きかけたその時、寝室の方から再び泣き声が響いてきた。
「うぇ……っ、パパ……っ、せんせ……っ」
「あー……」
乙哉が頭を掻きながら顔を顰める。
「やべ、希海、目覚ましちまった……。先生、お願い出来ますか?」
「え? あ、はい……」
乙哉の問い掛けに反射的に頷いた羽衣子は慌てて寝室へ向うとベッドの上で希海は不安そうに泣いていた。
眠りが浅かったのか、再び気持ちが不安定になっているようだ。
「希海くん、大丈夫だよ」
そっと声をかけながら羽衣子は再び側に座る。
「先生、ここにいるからね」
優しく頭を撫でると、希海は涙を浮かべながらも少しずつ呼吸を落ち着かせていく。
そのまま羽衣子は何度も声を掛け続け、昴の電話が終わるまでの間ずっとあやしていた。
そして再び静かな寝息が聞こえ始めた頃、
「……すみません」
背後から小さく声が掛かり、羽衣子が振り返ると電話を終えた昴が申し訳なさそうな表情を浮かべて立っていた。
そこに先程の鋭い雰囲気は全く無い。
「また吾妻先生に頼ってしまって……」
「お気になさらないでください……さっきよりは落ち着いたみたいですし、もう大丈夫かと思います」
小声でやり取りを交わした羽衣子はそっと立ち上がり、寝室を後にする。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、少しでもお役に立てたなら……」
「すっかり遅くなってしまって……送りますね。乙哉、希海のこと、頼むな」
「了解」
「え、でも――」
「せめて、それくらいはさせてください」
「……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
昴の穏やかだが譲らない口調に羽衣子は小さく頷いた。
マンションを出て羽衣子の住むアパートまで車を走らせていく車内では、日々の希海の保育園での様子などを羽衣子から聞いた昴は時折笑顔を見せる。
それから三十分程経った頃、アパート前で車を降りた羽衣子は改めて頭を下げた。
「本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ助かりました」
「希海くん、早く良くなると良いですね」
「ありがとうございます。では、失礼します」
「はい、お気をつけて」
短い言葉を交わした後、昴の車が静かに去っていくのを羽衣子は見送った。
それから自宅のアパートへと足を向けた羽衣子は集合ポストの前で立ち止まり、中を開けて確認すると数枚のダイレクトメールに混じって一通の封筒が目に入った。
手に取って見ると、そこには見覚えのある筆跡で宛名が書かれていて、裏返して送り主の名前を見た瞬間、羽衣子の指が僅かに震えていた。
「……え……」
手紙の差出人、それは――数年前から音信不通になっていた実の兄だった。