極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 昴と並んで歩き出した瞬間から、羽衣子は落ち着かず、ソワソワする。

 普段は希海も一緒で自然と会話もそちらへ向くけれど今は違う。

(二人きり……何を話せば……)

 その状況を意識した途端、羽衣子の胸は更に騒ぎ始めていた。

「さて、何から見ますか?」
「わ、私は大丈夫なので……京極さんが見たいお店で……」
「……貴方が見たい物は?」
「特には……」

 そう答えながら羽衣子は緊張した様子で視線を彷徨わせる。

 そんな姿を見た昴は小さく息を吐くと、

「……では、少し付き合ってください」

 そう言って歩き出した先は女性向けのファッションフロアだった。

 アクセサリーショップや洋服店、雑貨屋が並ぶ一角に入ったところで、昴はポケットからスマートフォンを取り出した。

「失礼」

 そして画面に視線を向けた後で羽衣子へその視線を移し、

「少し電話が長引きそうなので、良ければその辺りの店を見て待っていてください」
「え、でも……」
「なるべく早く切り上げますので」

 穏やかに促された羽衣子は小さく頷き、近くにあったアクセサリーショップへ足を踏み入れる。

 店内にはネックレスやイヤリング、ブレスレットや指輪などが並んでいて、ガラスケース越しに羽衣子はゆっくり見て回る。

 その様子を店の外から昴は静かに見守っていた。

 耳にはスマートフォンを当てているが、実際会話はしていない。

 そもそも電話が掛かってきたという話は嘘で、気を遣う羽衣子が一番気兼ねなく店を見て回る方法を考えた結果、これが一番なのでは無いかと思い、自身は電話をしている振りをしながら、羽衣子の視線がどの商品に向くのかを注意深く見ていた。

 すると、少しして羽衣子はネックレスを手に取ると、興味深そうに見つめた後で鏡の前で胸に当てて確認していた。

 けれど、値札を見た後で羽衣子はそれをすぐに元あった場所へ戻して次に進んでいく。

 戻す時、どこか名残惜しそうな表情が昴の中で強く印象に残った。
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