極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 嬉しいという感情は勿論だが、それ以上に自分をこんなにも思ってくれたことが羽衣子の胸を熱くした。

「……ありがとうございます……」

 消え入りそうな声でそう言うと、昴は僅かに目を細めた。

「ネックレスもストールも、吾妻さんに良くお似合いですね」

 その一言に、羽衣子の心臓は大きく跳ねていった。

 袋を抱き締めながら羽衣子は何度も、「ありがとうございます」と繰り返し、その声音は心から嬉しそうで、目尻を柔らかく下げて笑うその表情に昴の胸が酷くざわついた。

「本当にありがとうございます。凄く、凄く嬉しいです」

 その瞬間だった。

 昴の胸の奥が不自然なほど強く脈を打つ。

 自分の行動が羽衣子をこんなにも笑顔にして、感謝された――その事実が嬉しいと思ったのだ。

 そして、気づいた。

 羽衣子の笑顔を見ていると、妙に胸が落ち着かないことに。

 けれど、それなのにもっと見ていたいと思ってしまう。

 それは何故かと考えた時、ふと、慶太の言葉が脳裏を過った。

『俺、この笑顔をこれからもずっと隣で見てたい、コイツを泣かせたくないって思ったんだ』

 香恵と出逢って暫く経った頃、慶太が酒を飲みながら照れ臭そうに笑っていた、あの日のことを。

『それで気づいたんだ、俺…… 香恵に恋してんだなって』

「…………」

 昴は無意識に羽衣子を見つめた。

 胸の奥のこの落ち着かなさや、笑っていてほしいと思う感情に、泣かせたくないと思う気持ち。

 脳裏に浮かんだ可能性に昴は小さく息を呑む。

「大切にしますね!」

 そして羽衣子が再び微笑むと、その笑顔にまた胸が強くざわついた。
< 87 / 117 >

この作品をシェア

pagetop