極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 一方で羽衣子の胸もまた、激しく揺れていた。

 昴は細かいことによく気づき、自分が困っていれば自然に手を貸してくれるし、気を遣わせないようにさりげなく支えてくれる。

 そして今日だって、自分が何を見ていたかを覚えていて、こんな風にプレゼントをしてくれた。

「…………」

 袋を抱く腕に自然と力が入る。

(こんなこと、されたら……)

 折角胸の奥へ押し込めていた想いが、また顔を出してしまう。

 好きになってはいけないと何度も言い聞かせていたのに。

 昴は自分には大切な人を作るつもりはないと言っていた。

 危険な仕事をしている以上、誰かを傍に置けばその人を傷つけるかもしれないからと。

 その覚悟を聞いたからこそ、想いを伝えることなど出来ない。

 分かっているのに。

 こんな風にされてしまえば嬉しいし、期待をしてしまう。

 嬉しいはずなのに、苦しくて辛い。

 そんな、どうしようもない感情が胸いっぱいに溢れていき、

「……っ」

 気づけば羽衣子の瞳からぽろりと涙が零れていた。

「……!?」

 それを見た瞬間、昴の表情が一変する。

「す、すみません……!」
「え……?」
「そんなに迷惑でしたか!?」
「ち、違っ……!」

 普段は冷静沈着で頭の回る昴も、この状況には完全に動揺していた。

 まさか羽衣子が自分へ恋心を抱いているなど思いもしないからこそ、今のこの涙の理由が分からない。

 プレゼントが負担だったのか、押し付けがましかったのか、そんな考えばかりが頭を巡る。

「違うんです!」

 羽衣子は慌てて涙を拭った。

「その、すみません……その、嬉しくて……、それで、感極まって……驚かせてしまって、すみません」
「……そう、ですか」

 羽衣子の言葉に昴は安堵したように息を吐いた。

「それなら良かったです」

 それは本気で安心したような声で、それがまた羽衣子の胸を締め付ける。

「すみませんでした」

 そう言って柔らかく穏やかな笑顔を浮かべ直した羽衣子。

 それを見つめる昴の中では、確実に何かが変わり始めていた。

 羽衣子の笑顔を見ていると安心するし、自分がすることで笑顔になってくれたら嬉しいと思うのと同時に、嬉し涙なら良いけれど、悲しみや苦しみで涙なんて流させたくないと思うようになっていたのだった。
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