極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
近付く距離
 それから約ひと月が経とうとしていた頃、例の襲撃事件についてようやく進展があった。

若頭(カシラ)、ようやく吐きました」

 事務所のソファーに腰を下ろしていた昴の前で、組員の一人が低い声で報告する。

 連日の尋問の末、拘束していた襲撃犯の一人がついに口を割ったのだ。

「指示を出していたのは若頭の見立て通り、稲見組の高遠だそうです」
「……やはり、高遠か……目的は?」
「本人曰く、あの部屋の人物を狙えとしか言われていないと」
「そうか……」

 昴が低く呟くと、室内の空気が重く沈んだ。

 稲見組とは現在、表向きこそ均衡を保っているものの水面下では幾度となく小競り合いを繰り返している敵対組織だ。

 それゆえ下手に動けば全面抗争にも発展しかねないからこそ、慎重に事を運ぶ必要があった。

「……組長には俺から報告する。まだ何か吐くかもしれねぇ。出来るだけ多く聞き出せ」
「承知しています」

 一礼した組員は静かに事務所を後にする。

「……はぁ」

 深く息を吐きながら、昴は眉間を押さえた。

 組織同士の問題は一歩間違えればこちらだけでは済まない。

 状況次第では再び希海や羽衣子にまで危険が及ぶ可能性がある以上、軽率な行動など取れるはずもなかった。

 そんな中、机の上に置いていたスマートフォンが短く震え、表示された名前を見た昴はすぐにメッセージを開いた。

 そこに書かれていた内容に彼の目が細くなる。

「……見つかった、か」

 連絡を寄越してきたのは昔馴染みの情報屋で、内容は行方をくらませていた想汰について。

 ようやく足取りが掴めたのだが、

『現在、対象者は稲見組の人間と行動を共にしている』

 その一文を見た瞬間、昴は舌打ちを漏らした。

 本来なら、居場所が判明した時点で即座に捕まえるつもりだった。

 そして羽衣子に突き出し謝罪をさせ、彼女へ押し付けた借金も全て返済させるつもりでいたのだが、ある程度予想していたこととはいえ、ほぼ確実に相手が稲見組に身を置いているとなれば状況は変わってくる。

 迂闊に手を出せば、組同士の火種になりかねない。

 そのもどかしさから昴は苛立たしげに煙草へ火を点けた。

 そしてそれから更に数日後の休日、この日昴は組の用事で朝から留守にしていた。

 ただ、この日は希海が好きな戦隊ヒーローの
 ショーが隣町のショッピングモールで開催される日で昴が行けないから行くのを辞める訳にもいかず、現状況からして不安は残るものの皐月ともう一人の組員を護衛役として羽衣子や希海と共に出掛けることになった。
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