極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 休日とあって、ショッピングモールは家族連れで賑わっていた。

 そして、屋上特設ステージでは間もなく始まる戦隊ヒーローショーのアナウンスが流れている。

「まだかな……!」

 瞳を輝かせながら身を乗り出す希海の隣で羽衣子は小さく笑った。

「始まるまでもう少しだって」
「はやくみたい!」
「そうだね、見たいね」

 そのやり取りを少し後ろから見守っていた皐月は、隣に立つもう一人の組員の山野(やまの) 辰樹(たつき)へ視線を向けた。

「くれぐれも希海くんたちから目を離さないよう、お願いしますね」
「はい」
「万が一の時、俺は希海くんを、山野さんは吾妻さんを担当するということで」
「分かってます」

 再度役割分担を確認し終えた皐月は小さく息を吐く。

 出発前、昴から何度も念押しされた言葉が頭に残っていた。

『絶対に二人から目を離すな』

 それはいつになく真剣な表情で、だからこそ、店内を回る時も、今も四人は常に一緒に行動していた。

 少しでも離れれば、すぐどちらかが声を掛ける程に。

 それに、共に組んでいる辰樹は皐月と同じ時期に組織に加入した二歳上の組員で、普段はあまり話さない間柄ということもあって少しやりにくそうだ。

 そんな中、ショーは開催され、暫くは問題なく過ぎていく。

 けれど、ショーも終盤、二十分が経った頃だった。

 突然、けたたましい警報音が鳴り響いた。

『火災が発生しました。係員の指示に従って避難してください』

 警報と放送で一瞬、会場の空気が止まる。

 そして次の瞬間、悲鳴とざわめきが爆発した。

「え、火事……!?」
「逃げなきゃ!」
「お父さん、どこ!?」
「おかーさん!」
「皆様、落ち着いて! 係の者が誘導しますから押さないで!!」

 スタッフの叫び声は人々の混乱に掻き消され、観客が一斉に出口へ押し寄せ、屋上はあっという間に騒然となった。

 皐月と辰樹は即座に羽衣子と希海を守るように立つ。

「二人とも大丈夫ですからね」

 そう皐月が口にしたその時、

「あ……!」

 何かに気付いたように顔を上げると、ステージ袖で避難誘導をしているヒーロー役の一人を発見した希海は羽衣子の手を振りほどくと、そちらへ駆け出してしまう

「希海くん!?」

 人混みに逆らうように希海が走っていってしまい、羽衣子が追いかけようとするも、

「吾妻さんはここに居てください! 山野さん、頼みます!」
「了解!」
「春川さん、希海くんをお願いします」
「任せてください!」

 止められた羽衣子は辰樹と居るように念を押され、不安な気持ちを抱えながらもこの場に残ることを納得し、希海を追って走り出した皐月を見送った。
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