極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
 そして、

「吾妻さん、我々はこっちへ」
「は、はい……!」

 辰樹は羽衣子を連れて先に一足先に屋上を出ようと手を取った次の瞬間、ボンッという破裂音が特設ステージの方から聞こえてきたことで状況は更に一変。

 恐怖に逃げ惑う客たちが一気に押し寄せ、二人の視界が人で埋まり、

「っ、待っ――」

 羽衣子の手が辰樹の手から滑ってしまう。

「吾妻さん!」

 二人は人の波に流され、辰樹が羽衣子を呼ぶ声が遠ざかる。

「山野さん……」

 辰樹を探そうとするも、押されてよろめいてしまった羽衣子が倒れ込みそうになったその時、ふいに誰かが羽衣子の腕を強く掴んだ。

「え……」

 ぐいっと力任せに引かれ、

「ちょ、待って……!」

 人混みを避けるように非常階段脇の通路へ引っ張られ、更には屋上裏手の人目につかない場所まで連れて行かれてしまう。

 何が何だか分からない羽衣子は乱れた呼吸のまま腕を振り解こうとするも、

「離して……!」

 その手はびくともせず、

「貴方は一体……」

 恐怖はあるも、とにかく今はこの場から逃げて辰樹と合流しようと果敢に相手へ声を掛けると、

「久しぶりだな、羽衣子」

 振り返ったその人物は、

「お兄……ちゃん」

 騙して契約書にサインをさせ、高額な借金を押し付けて行方を眩ませていた、兄の想汰だった。

 羽衣子は混乱したまま想汰を見つめる。

 聞きたいことは山程ある。

 どうしていなくなったのか。

 どうして借金を残したのか。

 怒鳴りたい気持ちも責めたい気持ちもあるはずなのに、いざ想汰を前にすると喉が詰まったように何も言葉が出てこない。

 そんな羽衣子を見つめた想汰は苦しげに顔を歪めた。

「羽衣子、ごめん……!」
「……え?」

 それは悲痛な声で、今にも泣き出しそうなほど切羽詰まっているように見えた羽衣子はただ戸惑うばかり。
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