極道シングルファザーの甘く危険な独占愛
「な、に……急に……」

 戸惑う羽衣子をよそに想汰は焦ったように言葉を続けた。

「俺……ずっと、稲見組っていう組織の幹部連中に脅されてるんだ……」
「……っ」
「奴らは今、お前を狙ってる」
「え……?」

 突然の話に理解が追いつかない。

「ど、どういうこと……?」

 想汰は辺りを警戒するように視線を巡らせてから声を潜めて続けていく。

「お前今、七鳳組の若頭と行動してるんだろ?」
「…………っ! どうして、それを……」
「奴らは全部調べあげてるんだよ……稲見組の幹部連中……特に、高遠って奴は七鳳組の若頭を目の敵にしてる。だから、そいつと居るお前に目をつけた」
「そんな……」

 想汰の言葉が本当なら、もしかして今起きているこの騒ぎも全部自分が原因なのでは無いかと羽衣子は気づく。

「それに、そいつには子供もいるよな?」
「!」
「奴らはお前と子供、両方を狙ってる。七鳳組の若頭の弱点だからって」
「そんな……」
「俺がお前に借金を残したのも……盗聴器を仕掛けたのも……全部、高遠の指示なんだ……俺はアイツに借りがあるから逆らえなくて……それで……」
「…………」

 羽衣子は何も言えなかった。

 想汰の話していることが、どこまで本当なのか分からないから。

 ただ、これまで何度も裏切られてきたからこそ、全部を鵜呑みにすることが出来ない。

 信じたい気持ちと疑う気持ちが胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、黙り込んでしまう。

 そんな羽衣子の表情を見た想汰は自嘲するように笑った。

「……そりゃ、すぐには信じられないよな。当たり前だ、俺、お前に最低なことばっかしてきたし…………だけど、俺はお前のことを狙う奴らを許せねえ……とにかく、七鳳組の若頭の周りは危険すぎる。このまま側にいたら命に関わるかもしれない」
「……っ」
「今ならまだ逃げられる。俺が安全な場所に連れてってやる」

 想汰は羽衣子へ一歩近づき、

「羽衣子、俺と一緒に逃げよう」

 そう言いながら手を伸ばして羽衣子の手を掴もうとした、その時、

「羽衣子!!」

 名前を呼ぶ声と共に羽衣子の身体は想汰から引き離された。
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