あの人が来ると、空気が変わる―正論では、人は動かない―
■第8話 それ、ほんとに仲良しなの?
教室。
休み時間。
「ねえ、見てこれ」
陽菜が、小さなシール帳を広げる。
キラキラしたシールが並んでいる。
「かわいい〜!」
すぐに声が上がる。
数人の女の子たちが集まってくる。
「それ交換したやつ?」
「うん、この前ね」
自然と、輪ができる。
でも――
「それ、いいなぁ」
ひとりの子が言う。
少しだけ、遠慮がちな声。
「でもそれレアじゃない?」
別の子が言う。
「簡単に交換しない方がよくない?」
空気が、少し変わる。
「え…」
陽菜が、少しだけ戸惑う。
「どうする?」
視線が集まる。
「いや、別にいいんじゃない?」
「でもさ、ルール決めたよね?」
――ルール?
そんなの、あったっけ。
でも、
言い返せない。
「じゃあ今回はやめとこ」
誰かが言う。
その一言で、流れが決まる。
「うん、そうだね」
陽菜は、笑ってうなずく。
でも――
心の中は、少しざわついていた。
(なんか、違う)
でも、
何が違うのか分からない。
「次、あっち行こ」
誰かが言う。
輪が、そのまま移動する。
陽菜も、ついていく。
でも、
少しだけ、距離がある気がした。
――仲間外れじゃない。
でも、
なんか、しんどい。
その時だった。
「ちょっといい?」
振り向くと、
あの女性が立っていた。
「……」
もう驚かない。
女性は、さっきの様子を見ていたようだった。
「今のさ」
静かに言う。
「仲良さそうだったね」
「…はい」
陽菜が答える。
でも、少しだけ曇った声。
「楽しかった?」
――え。
言葉が止まる。
「……楽しかったです」
少しだけ間があった。
女性は、その間を見逃さない。
「ほんとに?」
優しく聞く。
陽菜は、少しだけ下を向いた。
「…ちょっと、違うかも」
その一言で、
胸の中のモヤモヤが形になる。
「なんか、合わせてた気がして」
「うん」
女性は、静かにうなずく。
「“仲良し”ってさ」
少しだけ考えるように言う。
「全部同じにすることじゃないよ」
――え?
顔を上げる。
「違ってても、一緒にいられること」
その言葉が、すっと入ってくる。
「さっきの、“やめとこ”って流れ」
少しだけ視線を横に向ける。
「誰が決めたの?」
――。
思い出す。
誰かが言った。
でも、
みんながそれに乗った。
「本当は、どうしたかった?」
陽菜は、少し考える。
そして、
小さく言った。
「…交換したかった」
「じゃあ」
女性はやさしく言う。
「それ、言っていいよ」
「…でも」
「嫌われる?」
ドキッとする。
「…ちょっと」
女性は、少しだけ笑った。
「違ってもいいよ」
一拍置く。
「それで離れるなら、それまで」
静かに言う。
「でも」
まっすぐ見る。
「本音で一緒にいられる方が、楽だよ」
胸の奥が、少し軽くなる。
その時、
さっきの子たちが戻ってくる。
「ねえ、次なにする?」
いつも通りの声。
でも、
少しだけ違う。
陽菜は、シール帳を持ったまま、
少しだけ勇気を出す。
「あのさ」
声が震える。
でも、止めない。
「さっきの、やっぱり交換したい」
一瞬、
空気が止まる。
でも――
「え、いいよ別に」
あっさり返ってきた。
「そんなダメってわけじゃないし」
「欲しいなら交換しよ?」
拍子抜けするくらい、普通だった。
――あれ?
さっきまでの空気は、なんだったんだろう。
女性の方を見る。
もう、姿はなかった。
でも、
さっきよりも少しだけ、
輪の中にちゃんといる感じがした。
休み時間。
「ねえ、見てこれ」
陽菜が、小さなシール帳を広げる。
キラキラしたシールが並んでいる。
「かわいい〜!」
すぐに声が上がる。
数人の女の子たちが集まってくる。
「それ交換したやつ?」
「うん、この前ね」
自然と、輪ができる。
でも――
「それ、いいなぁ」
ひとりの子が言う。
少しだけ、遠慮がちな声。
「でもそれレアじゃない?」
別の子が言う。
「簡単に交換しない方がよくない?」
空気が、少し変わる。
「え…」
陽菜が、少しだけ戸惑う。
「どうする?」
視線が集まる。
「いや、別にいいんじゃない?」
「でもさ、ルール決めたよね?」
――ルール?
そんなの、あったっけ。
でも、
言い返せない。
「じゃあ今回はやめとこ」
誰かが言う。
その一言で、流れが決まる。
「うん、そうだね」
陽菜は、笑ってうなずく。
でも――
心の中は、少しざわついていた。
(なんか、違う)
でも、
何が違うのか分からない。
「次、あっち行こ」
誰かが言う。
輪が、そのまま移動する。
陽菜も、ついていく。
でも、
少しだけ、距離がある気がした。
――仲間外れじゃない。
でも、
なんか、しんどい。
その時だった。
「ちょっといい?」
振り向くと、
あの女性が立っていた。
「……」
もう驚かない。
女性は、さっきの様子を見ていたようだった。
「今のさ」
静かに言う。
「仲良さそうだったね」
「…はい」
陽菜が答える。
でも、少しだけ曇った声。
「楽しかった?」
――え。
言葉が止まる。
「……楽しかったです」
少しだけ間があった。
女性は、その間を見逃さない。
「ほんとに?」
優しく聞く。
陽菜は、少しだけ下を向いた。
「…ちょっと、違うかも」
その一言で、
胸の中のモヤモヤが形になる。
「なんか、合わせてた気がして」
「うん」
女性は、静かにうなずく。
「“仲良し”ってさ」
少しだけ考えるように言う。
「全部同じにすることじゃないよ」
――え?
顔を上げる。
「違ってても、一緒にいられること」
その言葉が、すっと入ってくる。
「さっきの、“やめとこ”って流れ」
少しだけ視線を横に向ける。
「誰が決めたの?」
――。
思い出す。
誰かが言った。
でも、
みんながそれに乗った。
「本当は、どうしたかった?」
陽菜は、少し考える。
そして、
小さく言った。
「…交換したかった」
「じゃあ」
女性はやさしく言う。
「それ、言っていいよ」
「…でも」
「嫌われる?」
ドキッとする。
「…ちょっと」
女性は、少しだけ笑った。
「違ってもいいよ」
一拍置く。
「それで離れるなら、それまで」
静かに言う。
「でも」
まっすぐ見る。
「本音で一緒にいられる方が、楽だよ」
胸の奥が、少し軽くなる。
その時、
さっきの子たちが戻ってくる。
「ねえ、次なにする?」
いつも通りの声。
でも、
少しだけ違う。
陽菜は、シール帳を持ったまま、
少しだけ勇気を出す。
「あのさ」
声が震える。
でも、止めない。
「さっきの、やっぱり交換したい」
一瞬、
空気が止まる。
でも――
「え、いいよ別に」
あっさり返ってきた。
「そんなダメってわけじゃないし」
「欲しいなら交換しよ?」
拍子抜けするくらい、普通だった。
――あれ?
さっきまでの空気は、なんだったんだろう。
女性の方を見る。
もう、姿はなかった。
でも、
さっきよりも少しだけ、
輪の中にちゃんといる感じがした。