この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました
「ありがとうございます」
つい日本語を話してしまっていることに気づきハッとする。
「Grazie」
飛行機の中で練習しただけの下手くそなイタリア語で即座に言い直す。
「……いえ」
(日本人……!)
男性は背中を丸めると、心音の顔にかかった髪を耳にかける。
男性の細長い綺麗な指が耳に触れ、心音はピクっと肩を上げる。
(あっ……良い香り)
香水だろうか。男性から、ベルガモットのような甘い良い香りがした。
男性は丁寧な手つきで心音に帽子をかぶせると、乱れてしまっていた前髪も綺麗に整えてくれた。
「あ、ありがとうございます」
心音が男性を見上げお礼を言うと、男性は頷く。
まるで漫画のようなシチュエーションに、心音は胸をときめかせていたが、そこでハッとする。
腕時計を確認すると、ホテルへ向かう水上バスの時間が迫っていた。
「すいません、失礼しますっ……!」
心音は深々と頭を下げると、急いで男性の元を去る。
そんな心音の後ろ姿を、男性は見つめていた。