この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました
♡
ゴンドラを降りた頃には、すっかり日が暮れていた。
「すいません、大人気なく泣いてしまって」
(我に返ると恥ずかしい。会ったばかりの男の人の前で泣くなんて)
「謝ることはありません。泣きたい時は泣けばいいんです」
そう言うと、立ち止まる郁人。
心音も足を止める。
「あの、もしよかったら、明日も会いませんか?」
予想もしていなかった郁人からの誘いに、心音の胸は嬉しさで飛び跳ねた。
「はい、私もお会いしたいです」
「明日の十四時、あの橋で待ち合わせはどうですか?」
郁人は運河の上に架かるアーチ型の白い橋を指差し言う。
「いいですよ」
「よかった。ではまた明日」
「はい、また明日」
背を向け歩き出す心音。
少し歩いたところで、気になって足を止め後ろを向くと、そこにはまだ郁人の姿あった。
郁人は笑みを浮かべ心音に手を振る。
心音も笑顔で郁人に手を振ると、再び歩き出した。
オレンジ色の街灯の下、石畳の道を歩きながら、今までになく高揚する胸の高鳴りを感じて。
ホテルに戻ると、開けていた窓から生ぬるい風が入っていて、心音は目を閉じる。
頭に思い浮かんだのは、ヴェネツィアの美しい街並みでも、運河でもなく、郁人だった。