この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました



ゴンドラを降りた頃には、すっかり日が暮れていた。

「すいません、大人気なく泣いてしまって」

(我に返ると恥ずかしい。会ったばかりの男の人の前で泣くなんて)

「謝ることはありません。泣きたい時は泣けばいいんです」

そう言うと、立ち止まる郁人。

心音も足を止める。

「あの、もしよかったら、明日も会いませんか?」

予想もしていなかった郁人からの誘いに、心音の胸は嬉しさで飛び跳ねた。

「はい、私もお会いしたいです」
「明日の十四時、あの橋で待ち合わせはどうですか?」

郁人は運河の上に架かるアーチ型の白い橋を指差し言う。

「いいですよ」
「よかった。ではまた明日」
「はい、また明日」

背を向け歩き出す心音。

少し歩いたところで、気になって足を止め後ろを向くと、そこにはまだ郁人の姿あった。

郁人は笑みを浮かべ心音に手を振る。

心音も笑顔で郁人に手を振ると、再び歩き出した。

オレンジ色の街灯の下、石畳の道を歩きながら、今までになく高揚する胸の高鳴りを感じて。

ホテルに戻ると、開けていた窓から生ぬるい風が入っていて、心音は目を閉じる。

頭に思い浮かんだのは、ヴェネツィアの美しい街並みでも、運河でもなく、郁人だった。
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