この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました
(起こすのも申し訳ないから、電話番号を残さないと)
そう思い、心音はテーブルにあったペンを手に取るが、あることが頭をよぎり、手を止める。
(もし、また同じことになったら……?)
また裏切られて、傷ついて、そんなことになれば、自分は今度こそ立ち直れないだろう。
(今ならまだ引き返せる。戻れる)
心音はベッドの上で眠る郁人を見つめる。
(……愛おしい。でもだからこそ……)
心音は決めた。
ベッドに腰掛けると、郁人の額にそっとキスをする。
「……さようなら」
そう言い部屋を出ようとして、足を止める。
棚に上には、郁人がくれた花束があった。
(……これだけは)
花束を持つと、心音は今度こそ部屋を出た。
自分のホテルに戻り、シャワーを浴びるとスーツケースに荷物を詰めて、急いで駅に向かった。
道中、郁人との思い出で溢れて、胸が苦しくなった。
高速鉄道に乗って、過ぎ去っていくヴェネツィアの街を見ながら心音は思った。
もう二度と、恋はしないだろう__と。