この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました
私がそう言うと、郁人さんは嬉しそうにはにかんだ。
「どうかしましたか?」
「郁人さん。今でも、君がそう呼んでくれるのが嬉しくて」
「郁人さんだって、私のことを心音さんって呼んでいるではありませんか」
「フフッ、確かにそうですね」
こうしていると、あの日に戻ったかのようだ。
夢のようだった、あのイタリアでの日々に。
郁人も心音と同じことを思ったのか、口元に笑みを浮かべながら、何かに思い耽るように目を細める。
その瞳の奥には、慈しみのようなものを心音は感じだ。
「あの日……朝、目覚めて君がいないことに、とても驚きました」
徐に話し出した郁人の瞳には、悲しみの色が浮かぶ。
「どうして何も言わずに行ってしまったんですか?」
郁人の問いに、心音は言葉を返せず、黙ってしまう。
(この話をしたら、郁人さんはどんな風に思うんだろう。もしかしたら、本当に離れていってしまうかもしれない……)
「心音さん、俺を見て」
郁人の穏やかで優しい声に、心音は俯けていた顔を上げ郁人を見る。
郁人は出会った時と同じ、真っ直ぐな瞳で心音を見ている。
その瞳は、真実を知りたいと言っている。
(こんな誠実な人に、誤魔化すことはしたくない……正直でいたい)