この恋は制御不能です!愛を知らない冷徹社長に一目惚れされて、交際0日でプロポーズされました
「私が入社する前だから、かれこれ二十年は経っていると思うけど、車の事故だったって。それも酷い事故で、幼かった社長はその事故の現場に居合わせたらしいのよ」
安藤はアイスコーヒーを一口飲むと、話を続ける。
「先代の社長は今の社長のお父様で、そのお父様が亡くなってから、うちの会社の業績は落ちたのよ。会長の力もあって会社はなんとか持ち堪えたけど、当時はかなり大変な状況だったみたいよ」
「じゃあ、社長が来たのも、いずれはあの会社を継ぐからなんですね」
松下の言葉に、安藤は頷く。
イタリアで両親の話を聞いたことがあったが、郁人はそんな素振りを少しも見せなかった。
むしろ、二人のことを話す郁人は幸せそうだった。
(知らなかった。郁人さんに、そんな辛い過去があるなんて……)
「ん? あれって神田さんじゃないですか」
松下の声に顔を上げると、目の前の歩道に康太郎が歩いていた。
その隣には美鈴がいる。
「本当だ。一緒にいるのって、営業事務の高嶺さんじゃないの?」
「えっ、なんであの二人が一緒にいるんですか。しかも、あんな仲良さげに……」
二人は腕を組みくっついて歩いている。
その姿は誰がどう見ても、恋人にしか見えない。