僕の秘密と、彼女の嘘

知りたくなかった

土曜日の夕方。
部屋でスマホを握りしめたまま、同じことばかり考えて、頭の中がぐるぐるしていると、

「響ー! 買い物付き合ってー! お米買うの忘れてたー!」

階下から、母の声。

ドアを開けて顔を出すと、仕事帰りの母が玄関で手を振っていた。

「えー……」

全力で不満を込めて返事をする。

「あーもう! スーパーの隣のジェラート屋さんで奢るから!」

それならば話は違う。

「オッケー!」

即答だった。

「私も行くー!」

リビングから奏が飛び出してきた。

……僕もだけど、妹も現金なやつだな。

*

買い物が終わって、ジェラートを食べる頃には空はすっかり深い夕暮れ色になっていた。

僕は店の外のベンチに座り、新作のピスタチオナッツ味を堪能していた。
黄緑色。妙に主張が強い。

奏は「ジェラートはいらないから本がほしい!」と言って、母を本屋に引っ張っていった。
おねだりスキルが高すぎる。見習いたい。
母もピアノのこと以外では奏に甘かった。

七瀬に髪をセットしてもらってから、奏はすっかりおしゃれに目覚めた。
少女マンガか、ローティーン向けファッション誌かで、真剣に悩んでいるはずだ。

……ダメだ。

何を考えても、結局七瀬に戻ってくる。

僕、どうかしてるのかな。

溶けかけたジェラートを見つめて、ため息をつく。

七瀬に……会いたいな。
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