僕の秘密と、彼女の嘘
そのときだった。

「見て見て! 舌、青い?」

――え?

聞き覚えのある声が、横を通りすぎていった。

七瀬……?

薄暗くて顔ははっきり見えない。
でも、声と、髪型と、後ろ姿でわかる。

七瀬だ。

しかも、隣に誰かいる。
背、高いな。

……男だ。

「暗くて見えねぇ」

「ねえ、ユズキのいちご味も一口ちょうだい」

ふたりで、かき氷を食べながら歩いている。
こっちには、気づいていない。

心臓が、やけにうるさい。
目が、離せない。

「今日は素直に一口くれるじゃん」

「お前、嫌だって言っても強奪するだろ」

七瀬の笑い声。
楽しそうで、自然で、――近い。

「ねー、舌、紫になった?」

「だから暗くて見えねぇって」

二人は笑いながら、夜の中に溶けていった。

気づけば、カップを強く握りしめていた。
中のジェラートは、どろどろに溶けている。

……まるで。

形を保てなくなった、今の、自分の心みたいだった。
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