僕の秘密と、彼女の嘘
「ごめんね。最初にちゃんと話せばよかったんだけど……」

七瀬の声は、かすかに震えていた。

僕はすぐに返事ができなかった。
理解が、追いつかない。

目の前にいるのは、これまで"彼女"だった七瀬。
でも今、七瀬は静かに告げた。

――自分は、男だと。

「響は僕のこと、女の子だって思ってたよね。それに……僕が女の子のほうが、響は安心するかなって」

胸の奥が、じわりと痛む。

そうだ。
僕はずっと七瀬を女の子だと思っていた。

初めて話した日。
メイクをしてもらって、鏡越しに笑い合ったあの日。

僕は言った。

『女の子と話せるの、ちょっとほっとする』

あの一言が、七瀬を縛ってしまったのかもしれない。

「いつか本当のことを話そうとは思ってたんだ」

七瀬は笑っている。でも、その笑顔はどこか不安を隠しているように見えた。

「でも今さら“本当は男なんだ”って言って、軽蔑されたらどうしようって。騙してたって怒られたらどうしようって……怖くて…言えなかった。」

「……軽蔑なんてしないよ」

気づけば、強い声が出ていた。

七瀬が目を見開く。

「……ほんとに?」

不安そうなその瞳を見て、胸が締めつけられる。

「正直、びっくりして……まだ、よくわかんないけど。でも……七瀬は七瀬だよ」

それだけは、はっきりしていた。

七瀬は小さく息を吐いて、それから僕に抱きついた。

突然のことに驚いたけれど、拒む気持ちは湧かなかった。

栗色の髪が頬に触れる。
制服越しに感じる体は細いのに、確かに男の筋肉があった。

それでも、嫌じゃなかった。

「七瀬は、七瀬だよ」

僕はもう一度そう言って、そっと背中に手を回した。
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