僕の秘密と、彼女の嘘
「……は?」

たぶん、僕はそんな顔をしてた。
前もそんなこと言ってたっけ。
七瀬は笑って続ける。

「前に話したとおり、僕には三人のお姉ちゃんがいて、僕が末っ子。僕だけが男の四人姉弟。でもね、僕が一番かわいかったからお姉ちゃんたちの着せ替え人形だったんだ。」

……自分で言う?
でも確かに小さい頃の七瀬はさぞかしかわいかったのだろう。
七瀬が言うには一番古い自分の記憶ですでに女の子の服を着ていたらしい。

そして今も着せ替え人形の立場は変わらないらしく、

「最近はいろいろ無茶を言うから困ってるんだ。『それ以上身長伸ばすな』とか『筋肉つけるな』とか『喉仏だすな』とかさぁ…。」

「うそでしょ?」

想像以上に無茶な注文で思わず笑ってしまう。

「ね、無茶苦茶だよね。でもね、自分で言うのもなんだけど、実際似合ってるし、かわいい服好きなんだよ」

七瀬があまりにもあっけらかんと笑うので、僕は思わず聞いてしまった。

「七瀬って名前は?」

「本名だよ。僕たち、お互い中性的な名前だよね。」

「……じゃあ中身は? 心も男?」

「うん。だいたいそうだね。女装してるときは女の子っぽい気分になるけど」

……わからない。

目の前にいるのは、七瀬だ。
それは間違いない。

でも。

僕が好きになったのは、"どっち"だったんだ?
< 31 / 36 >

この作品をシェア

pagetop