僕の秘密と、彼女の嘘
*

補修を終えて、ひとりで正門を出たときだった。

道路の向こう、公園の前に――あの子がいた。

今日は犬はいない。

目が合った。

はっと顔を上げた彼女が、僕に向かって手を振る。

……僕に?

辺りを見回す。でも他に誰もいない。

信号が変わる。

彼女は駆け足で横断歩道を渡ってきた。

距離が消えて、初めて気づく。
思っていたより、背が高い。

目線が同じ高さ。
大きな瞳がまっすぐ僕を見る。

「よかったぁ。話してみたいと思ってたんだ」

屈託のない声。

「今日は……僕ひとりだけど」

「うん。だから君と話したいの」

そう言って、距離を詰めてくる。

そして、耳元で囁く。

「君って、女の子だよね?」
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