僕の秘密と、彼女の嘘

境界を越える

心臓が、一拍遅れた。
うまく息ができない。

「でもこの学校、男子校だよね。何か事情が――」

反射的に、彼女の口を塞いだ。

否定しても無駄だ。
目を見ればわかる。
もう、誤魔化せない。

「場所、移そう」

そう言うと、彼女は大きな目をさらに見開いたまま、こくこくと首を縦に振った。

*

公園のベンチに、妙な距離感で並んで座る。
夕方の風が、やけに気まずく感じる。

「私、北原七瀬(きたはら ななせ)

沈黙に耐えかねたのか、彼女が先に口を開いた。

白浜響(しらはま ひびき)。……女だよ。」

観念して続ける。

「よくわかったね」

七瀬は、なぜか満足そうににっこり笑った。

「なんとなく、そうかなって」

「なんとなく!? いや嘘でしょ……」

思わず声が裏返る。

「学校では誰にも気づかれてないのに」

「……で、どうして男子校に?」

僕は、ここに来るまでのいきさつを話した。

「……男子校って、知らなかったんだ」

藤美学院(ふじびがくいん)は来年度から女子生徒の募集を始める予定で、公式の募集要項ではすでに「共学」表記になっていた。

それに――

「名前も中性的だし、もともと髪も短かったからさ。学校側にも男子だと思われてて」

編入試験に合格して、入学手続きも順調に進み、
性別に気づかれたのは、入学の一週間前だった。

そこから学校と話し合い。

一度は編入そのものを白紙にされそうになった。
でも今さら他の高校なんて行けない。

最終的に出た結論は――

「……男子のふりをして、入学したんだ」
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