遅かれ、早かれ、恋になりまして。
**

午後の仕事を再開し、雑念を振り払った結果、気づいたら就業時間になっていた。


「先輩、今日も残業ですか?」

「うん、ちょっとだけね」

「この前、ご飯の話覚えてます?」


覚えてるよーと言いながら、ふあぁ…と欠伸が出てきてしまう。ここにきて一気に眠気が押し寄せてきて、まぶたが重くなるのを必死でこらえる。

八木くんのいつも通りの呆れ顔を横目に、パソコンに視線を戻す。


「無理しないでくださいね。お疲れ様です」

「はーい、お疲れ~」


軽く手を振ると、八木くんはペコリと頭を下げた。変なところで律儀だ。


「……よし、頑張ろう」


小さく呟いて、自分の頬を軽く叩く。

NEXERAの案件がひと段落したからと言って、それ以外の業務が消えたわけじゃない。画面には、見慣れた社内案件の進行表や、修正依頼のメールがいくつも並んでいる。

どれも急ぎじゃないはずなのに、気づけば後回しにしていたものばかり残っている。広告バナーの差し替え依頼、既存クライアントへの提案資料の修正、社内用の進捗報告フォーマットの更新。ひとつひとつは大きな案件じゃないのに、数があるだけで地味に重い。


「…こういうのが一番、時間食うんだよね」


誰に言うでもなく呟いて、私はマウスを動かした。修正指示のメールを開いて、画像データを差し替えて、文言を直して、確認して。

……早く終わらせて、佳奈子と飲みに行こう!

無意識にキーボードを打つ指先に力がこもって、カチカチという音がいつもより少しだけ速いテンポになる。最後の確認画面まで進んで、思い切りエンターキーを叩く。

集中、集中……!

自分に言い聞かせるようにもう一度画面を開き直して、次のメールに手を伸ばした。
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