遅かれ、早かれ、恋になりまして。
恋愛だってきっと同じだ。
だから私は今も、好きって言い切れないままここにいる。
でも、それでも。
頭の中に、あの日の声が浮かぶ。
『もっと自信持っていいと思いますよ』
あの時の、少しだけ優しい声。
真っ直ぐこっちを見て言われた言葉。
胸の奥が、またじわっと熱くなる。
……本当に、そう思ってますか?
その言葉だけが頭の中で何度も反響して、うまく飲み込めないまま、私は小さく息を吐いた。
失礼します、と店員がうどんを運んでくる。遅くなり申し訳ございません、と謝る姿に、大丈夫ですよーとふたりで返しながら、店内の時計を見ると12時30分だ。
これは早めに食べないといけない。
「ヤヨ、夜あいてる?飲みに行かない?」
「今日ちょっと残業になりそうなんだけど、すぐ終わらせるし待っててくれる?」
「全然大丈夫!ヤヨの話、たくさん聞きたいし。私も仕事の愚痴とか言いたいし」
佳奈子は笑ってうどんをすすり始める。
その無邪気な笑顔につられるように、私も少しだけ肩の力が抜けた気がした。
さっきまで胸の奥に沈んでいた言葉たちが、ほんの少しだけ遠ざかっていく。
うどんの湯気の向こうで、現実の音が少しずつ戻ってくるのを感じながら、私は箸を握り直した。