遅かれ、早かれ、恋になりまして。

「どうしよう……」


誰もいないオフィスで、思わずパソコンの前で固まる。

課長はもう帰っている。八木くんもいない。今この状況を即判断できる人がいない。


……有馬さん。


頭に浮かんだ瞬間、自分でも少し驚いた。

でも次の瞬間にはもう、他の選択肢が思い浮かばなかった。

私はスマホを取り出して、震える指で名刺フォルダを開く。
保存してあった連絡先をタップするかどうか、一瞬だけ迷って——それでも、通話ボタンを押した。

呼び出し音が鳴るたびに心臓がうるさい。


「……出て」


小さく呟いたその直後、数回目のコールで、通話が繋がる音がした。


『はい』


落ち着いた声が、静かに耳に届く。その一言だけで、少しだけ呼吸が戻る。
でも同時に、私は気づいてしまう。これは“仕事のミス”で、“今すぐ対応が必要な案件”で、“私ひとりじゃ判断できない状況”だということを。


「あの……LUCENTの明石です」


声が少しだけ震える。


「すみません、今、プロジェクトの資料見てたら……重大な確認漏れがあって……」


言いながら、自分の中で焦りがどんどん現実になる。


「このままだと、配信開始に間に合わない可能性があって……どうしたらいいか分からなくて……」
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